お米と生乳〔8040〕2025/04/20

2025年4月20日(日)曇り
今日は日曜日。なので、少しゆっくりダラダラと書いてみましょうかね、珍しく社会問題などを。
穀雨。二十四節気のひとつ、穀雨。春雨が百穀を潤し、農作物の成長を促す恵の雨が降る頃、と、AIも言うてます。
ここは今朝の会社の前。田んぼの稲は、順調に生育しているようです。穀雨やけど、雨は降ってません。今のも雨が落ちて来そうな、穀雨らしい風景ではあります。
さて。お米の値段が大変なことになってます。まあ、今まで、稲作農家では飯が食えない程安かったのも問題やけど、それにしても、だ。いや、お米の値段が適正に上がり、農村社会が成り立っていくのはいいことだとは思うけど、それにしても、だ。そもそも農家というよりは、流通業者が抱え込んで利潤を得ているんではないか、といった見方もされてます。果たして真相や、いかに。
実は、牛乳の需給でも、同じようなことがありました。10年ちょっと前のことでしょうか。非常に微妙で絶妙な需給バランスの上に成り立っている、日本の酪農乳業。生乳は保存が効かず、余計に需給バランスは難しいので、ちょっとしたことでバランスが崩れ、余ったり足らなくなったりします。その時は、生乳生産の落ち込み等もあって、需給が非常にタイトになりました。通常、飲用向けに処理できなかった生乳は脱脂粉乳とバターの加工します。そしてそういった乳製品には、それぞれ、乳飲料に使われたりお菓子に使われたり、といった市場が成立してます。
生乳需給が逼迫すると、飲用向けが優先されるので、そういった乳製品が足りなくなる。その折も、脱脂粉乳とバターが不足し、業界は大変なことになりました。
我々乳業メーカーは、脱脂粉乳を使った低脂肪乳などを作ってます。その原料が、足りない。価格も高騰するけど、何よりモノがない。これは大変だ、ということで、僕らは、農水省に対して海外からの緊急輸入などをすることで一時的な需給の緩和を図ることを幾度も申し上げました。
その際の国の返答は「計算上、国内在庫は足りている」というもの。国内在庫は足りているはずなので、それでなんとかしろ、と。生産者からの突き上げもあり、輸入は避けたい、というのが役所の本心だったんでしょう。
その際、足りているはずの乳製品不足の原因は、価格維持を目論む流通業者が在庫を抱え込んでいたのと、需要者が、在庫が不安なのでそれぞれ少しずつ溜め込んでいた為、と言われています。流通業者は、高く仕入れているので、なんとしてもそれを安く売るのは避けたい。そこで、なんらかの対策を講じても、品薄状態が長く続く、という結果になってしまったと言われています。
ね?どこかで見た風景でしょ?
さて。その乳製品不足の時には、結局どういう顛末になっていったのかも、書いておきます。
僕らの目の前に、脱脂粉乳は、ない。そこで、国の役人さんが居る場で、僕はこのように言いました。
実際、目の前にモノがないと、商品がつくれない。仕方ないので、低脂肪乳などの乳飲料には脱脂粉乳を使わず、輸入物のホエーパウダーなどで代替するようにするしか、ない。そうした場合、商品の「原材料表示」まで変更することになる。今はいいけど、将来、もし生乳需給が緩和して脱脂粉乳が余る状況になっても、一旦表示を変更してしまった商品は元に戻らない。脱脂粉乳を使わないようになる。それでもいいのか。
こういう主旨だったと記憶します。
その後、政府が生乳増産政策への舵取りを行い、かなりの時間がかかって乳製品不足は解消しました。生産を増やせ増やせ、と。
相手は生き物なので、増やせと言われても、蛇口を捻るように増産できる訳もなく、何年かかかってやっと生産が増えてきました。そしてそこに、コロナ。一気に生乳は、余剰状態へ。あっという間に、余剰状態へ。
生乳が余剰になると、脱脂粉乳などの乳製品は、余ってきます。ところが、以前の「余剰」とは少し状況が変わっていました。バターは余っていないのに、脱脂粉乳は、余る。同じようにできるはずの脱脂粉乳とバターで、明暗分かれてしまったのであります。国は、一生懸命脱脂粉乳の需要拡大を図ろうとするけど、なかなか在庫は減らない。それが、今。
上の、10年前の僕の発言は、どういう意味を持つのか。今一度、関係者の皆さんには、これからの酪農政策、農業政策を考えていく上での参考にしてもらいたい、などと思うのでした。
そしてこれは、今のお米問題でも参考になる話だと思います。農産物の需給問題は、将来を見据えることが、肝要だと思う。
日曜日の朝。ダラダラと長文、失礼しました。
「穀雨は、春の終わりを告げ、夏に向かう季節の移り変わりを感じさせる節気です」とAIも言うてます。そう。高知は今から、夏へと向かいます。豊作になると、いいね。