断層と地震と人間の営み〔7895〕2024/11/26
2024年11月26日(火)曇り
昭和5年11月26日早朝、北伊豆地震が発生。94年前の、今日。丹那断層のズレによって生じた直下型地震で、家屋倒壊などによる犠牲者を多く出しました。この地震、吉村昭さんの名作「闇を裂く道」に出てくるので、僕もよく知ってます。1918年から1933年まで、16年の歳月をかけて掘られたのが国鉄東海道線の丹那トンネルで、その工事による犠牲者は67名にも及び、断層を突き抜ける工事の難しさを世に示した丹那トンネル。
特に、トンネルの上の丹那盆地は、トンネルを掘ることによって断層から大量の水が流れ出し、その流出した水量は芦ノ湖の水の3倍とも言われてます。そして豊かな水による水田や山葵で有名だった丹那盆地から山葵の姿は消えました。
その工事中に発生したのが北伊豆地震。断層に到達していた水抜き坑で切羽全体が横ずれして、坑道いっぱいにピカピカの断層面が現れた場面が、「闇を裂く道」でも描写されてました。断層を貫通するトンネルが、断層がズレることでどうなるのか。その事実を突きつける場面。これは、今、全国で供用されているトンネルにも起こりうる事象であることは、忘れてはなりませんね。
そして。その昭和5年の北伊豆地震は、ひょっとしたら丹那トンネルの工事で大量の水が抜かれたことが引き金になったのではないか、という話もあります。高校の大先輩にして元京大総長、静岡県立大学学長の地震学者尾池和夫先生が、高知新聞に、少し控えめにではあるけどそのことを書いてました。
静岡県立大学のホームページのコラムには、もう少し率直に書いてます。こんな感じで。
「丹那トンネルの掘削により大量の水抜きで地下水に異常を生じ、それが引き金になって大地震を早めに引き起こしたと考えられる。地下の水の動きが地震発生の引き金になった多くの例が知られている。」
北伊豆地震のウィキを見ても、そんな話は書かれてません。しかし、この専門家の意見は、僕は重たいと思う。で、尾池先生は、リニア新幹線の工事でも同じことが起きる可能性に言及して警鐘を鳴らしておられますね。地球のことはまだまだ僕らにはわかっていない。
写真は今朝、夜明け前の秦泉寺。この場所に、白鳳期に大きな寺院がありました。創建は7世紀末葉とのこと。白鳳の南海地震が発生したのは684年。その前だったのか後だったのか。ここは当時、古浦戸湾の岸辺。地震津波は、ここまでやってきた可能性が高い。もし寺院があったら、揺れと津波で大きな被害があったかも知れません。いずれにしても、地震は、いつ、どこで、どんな大きさでやってくるのか誰にもわからない。
ひょっとしたら人為的に発生時期が早められたのかも知れない北伊豆地震が発生したのは、94年前の、今日。