冷やいですね〔7224〕2023/01/25
2023年1月25日(水)晴れ
冷やいねー。冷やい。天気予報は正しかった。昨日の午後、高知市内でも雪が降り始めて、こりゃあ年末の大雪みたいになるろうか、とみんな心配しておりましたが、幸いなことに雪は止み、通行止めになっていた瀬戸大橋や高知自動車道も、今は通れるようになってます。
通れるようにはなってますが、本州に渡ってからの高速道路が厳しいねー。まあ、大自然のやることですきに、仕方ない。できることをやるしかありません。各地、大雪や低温で被害がでないことを祈るばかり。
雪と言えば、最近、こんな本を読みました。中谷宇吉郎著「雪と人生」。北海道帝国大学で、世界で初めて人工雪の製作に成功したので有名な中谷宇吉郎先生。文章が巧みで、なかなか素敵な随筆をたくさん残している、中谷宇吉郎先生。
このにっこりでも幾度か書いたことあるように、中谷宇吉郎は、東京帝国大学で寺田寅彦先生の教えを受け、その助手として、寺田学とも言って良い、実験物理学への考え方を学んだのでした。そして、多くの素敵な随筆を残したのも、もちろん寺田寅彦先生の薫陶であるのは、間違いない。お陰で、僕らは、人工雪ができるまでの実験過程や、戦前の各地の風景を、読みやすい文章で知ることができる訳です。
そう。この「雪と人生」には、人工雪を実験でつくっていく過程を書いてくれています。そして、こんな文章も。「よく人にそれはどういう目的の研究なんですかと聞かれるので、こうして雪の成因が判ると、冬期の上層の気象状態が分かるようになって、航空気象上重要なことになるのですよと返事する。そうするとたいていの人はなるほどと感心してくれる。しかし実のところは、いろいろな種類の雪の結晶を勝手につくってみることが一番楽しみなのである。」
ね?寺田寅彦の薫陶ここにあり、て感じ。
あと、この本には、昭和15年頃の北海道奥地の様子が描かれています。北大で勤務する訳やけど、雪のサンプルなどを採取したりしに、奥地まで出掛けていき、その様子を随筆に残しているのでした。例えば、豊似。今は広尾町の中の小さな集落で、こんな感じ。当時はまだ、北海道開拓の厳しい風景が広がっていた場所。そこに、当時は存在した鉄道の広尾線で行ったときの、文章。
「非常に混んでいて、縞目も分からないほど汚れきった着物を重ね着した女だの、犬の皮をはおった土工風の人たちだのが、ストーヴの上に押しかぶさっていた。そして誰の顔もひどく汚れ、すえたような臭気が車内に満ちている。」
「前年に入植したばかりの人たちの家が点々としてあるのが見えた。家といっても、名ばかりの小屋で、どこで手に入れたか、焼けトタンらしい古鉄板と、木の板とでつぎはぎの屋根をふいてあった。それが妙に傷ましく見えた。」
「雪は残っていなかったが、寒風が広いこの荒野を吹きつらぬいていた。そのなかで、ただ一人木を伐っている男の姿が見えた。一番心に残るのは、その小屋の一つに、赤ん坊のむつきらしいものが少し乾してあったことである。」
僕が生まれるほんの20年前の話。北海道は、まだ、厳しい原野を開拓するような場所であった。そんなことが、この中谷先生の文章で、臨場感を持って知ることができるのでした。
Googleマップで見ると、その豊似には、中川一郎記念館がありました。なるほど。北海のヒグマ、中川一郎は、中谷宇一郎先生が描写したような土地で育ったのか。なるほど。
ともあれ、明日まで続く、この気候。被害がないことを祈るばかり。皆さんも、お気をつけください。