時雨蛤〔7167〕2022/11/29
2022年11月29日(火)小雨
晩秋から初冬に、降ったり止んだりする雨のことを「時雨」といいます。時雨。しぐれ。今朝の雨は、そんな時雨なのかも知れません。それにしては結構しっかり降ったりもしておりますが、それはそれ。時雨ということにして、話を進めよう。
松尾芭蕉が亡くなったのは元禄7年10月12日で、西暦にすれば1694年11月28日。そんな訳で、陰暦の10月12日を時雨忌と呼んで、芭蕉先生を偲んでおるんですね。知らんかったけど。とにかく今は、時雨の季節。時雨は冬の季語ということなので、もう、今は「冬」ということになります。そうやね。明後日からは12月ですきんね。いつの間にか、今年ももう師走。はやいねー。街にはクリスマスソングが溢れる季節になりました。
写真は今朝の本社棟前。静かな雨の向こうに工場の灯り。なんか、美しい風景。
僕の好きな「大言海」で、時雨の項目を見てみました。
時雨【志ぐれの雨ノ略】
シグルルコト。秋冬ノ際ニ、且ツ降リ、且ツ晴ルル、小雨ノ名。
簡単やけど、そういうこと。降ったりやんだりせんと、いけません。それが時雨。で、陰暦の十月は神奈月やけど、時雨月とも呼ぶと「大言海」に書いてます。「時雨月」の次の項目が「時雨煮」で、「時雨蛤」のことである、と書かれてます。そして「時雨蛤」について、なんでか知らんけどものすごく詳しく記載されているのが、楽しい。
時雨蛤(志ぐれ-はまぐり)
蛤ノむきみヲ洗ヒ、古根生姜ヲ薄ク刻ミ、別ニ裏漉シシタル䶢味噌ト、味醂トヲ、鍋ニ程ヨク入レ、蛤ト、生姜ト、共ニ投ジテ、火ヲ通シタレバ、其材料ヲ、目笊ニ上ゲ、鍋ノ汁ヲ煮ツメテ、笊ノ材料ヲ、再ビ笊ニ入レ、汁ノ煮ツマリタルヲ度トシ、青山椒ヲ細カク刻ミテ、混ジテ成ル。伊勢國、桑名ノ蛤、大ニシテ、陰暦十月頃、味、美ナリ。故ニ、時雨蛤ノ名アリ。浅蜊貝ノ時雨煮、亦、略、同ジ。
なんという詳しさ。ほぼほぼ1人でこの辞書を書き上げた大槻文彦先生、時雨蛤が好物やったと見ました。辞書というより料理のレシピですきんね。これを書き写しながら、なんか、食べたくなってしまった。時雨蛤。青山椒の細かく刻んだのを入れるのがポイントやね。知らんけど。
そんな訳で、外も少し明るくなってきました。時雨があがりそうになり、空が明るくなってくるのを「時雨明かり」と言うらしいけど、そろそろ時雨明かりでしょうか。冬近し。今朝は、季節テーマで書かせて頂きました。