ひまわり文庫2021年11月の新刊〔6775〕2021/11/02
2021年11月2日(火)晴れ!
コロナも、なんとなくおとなしくなってる今日この頃。このまま収束し、治療薬もできて、普通のインフルエンザと同じような疾患に成り下がってくれたらいいですね。ホントに。
そんな訳でひまわり文庫、2021年11月の新刊。
いやー、秋やのに、読まんかった。このところ、なんか知らんけどYouTubeとかをついつい観る時間が増えてしまい、読書量が減ってしまった。こんなことではきあん。いけません。秋深し。本、読まなくちゃ。読みましょう。
さて。今月、小説は2冊。
「ルナ・ゲートの彼方」は、ハインラインの佳作。「夏への扉」に次いで売れたというので、買って読みました。いやね。あまりにも、あまりにも「夏への扉」が名作過ぎて、期待過剰でした。でもまあ、面白かったです。あの時代のSFらしい。今ではないテイストの、SF。いや、「夏への扉」が面白過ぎました。
「フーガはユーガ」は、僕の大好きな伊坂幸太郎。安定の伊坂幸太郎。いつもの伊坂ワールドですが、結末は、素敵などんでん返しのハッピーエンド、ではなくて、少しだけ寂しい。こういう風味も、いいと思いました。やはりこの人の筆力は、すごい。僕も書きたい伊坂のように、と、いつも思ってしまいます。すごいね、この人は。
「人はなぜ死ぬのが怖いのか」。システム科学や脳科学の研究から、人が生きるとはどういうことか、死ぬとは何なのか、を理論的、合理的に考察し、それによって「死ぬのは怖くもなんともない」と思うに至った話を、理路整然と書いてます。これ読んで理解できたら、死ぬのが怖くなくなる、という訳やけど、この本の最後の「文庫版エピローグ」という文章に、こんなこと書いてます。「正直言うと、なぜだか、書いているうちに死ぬのが怖くなってしまった。」でも、その感情を隠して書いたのが、この本だと。「死ぬのが怖くないと思うのは感性であって、それを論理で説明しようとしても無駄だ」と、言い切ってしまうどんでん返しの文末。なかなかそれはそれで、興味深い。そう。生きるとか死ぬとかに対する感情は、やはり、複雑極まりないのだ。
で、これ読んで、以前に読んだ「奇跡の脳」を読みたくなって、再読しました。このジル・ボルト・テイラーさんという著者は、脳科学者。その脳科学者が、ある日、若くして脳卒中になってしまう。脳科学者の目で、脳卒中になるとはどういうことかを冷静に観察してるんですね。刻一刻と進む、脳の破壊。そのとき本人は、いったいどういう感覚なのか。右脳と左脳の関係などを解きながら書かれたとても興味深い本。ぜひ、一度、皆さんにも読んでもらいたい。これ読んで、仏陀は、右脳と左脳を自分で自由にコントロールできた特異な人間であったのかも知れない、と、思いました。
軽いの。「対峙力」。これ書いた寺田有希さんは、元アイドルプロダクションに所属してたけどクビになり、紆余曲折あって、今はYouTubeでホリエモンの相方を務めたりしてる女性。それこそYouTubeで見かけて、興味持ったので、読みました。はい、読みました。なるほど。たまにはね。こういうのもね。
「歴史のダイヤグラム」。日本の鉄道史と、様々な事件とのかかわりや、鉄道風景を描いた作家さんの話、などなど、鉄っちゃんには興味が尽きない話題を集めた本。暇な時に眺めるのは良い本ですねー。鉄道は、僕らの社会に独特の風味を醸し出す、素敵な文化。そう。鉄道は文明でもあるけど、文化なのだ。
こないだ東京行ったときに、八重洲ブックセンターでついつい買ってしまった「江戸式マーケ」。別にわざわざ八重洲ブックセンターで買わんでもいい本ですが。江戸時代、日本には優れたマーケッターがたくさん居りました。その偉業や成功譚を、現代の言葉で解き明かす。いや、面白い。勉強になります。三井の創始者である三井高利(1622~1694)の商売を、ドラッカーが「マーケティングの元祖である」と喝破した話から始まって、すごい商人たちが、いかに成功したのかをわかりやすく解説。現代の言葉で。現代の言葉で書かれると、説得力がグンと増します。面白い。
こないだ「機械式時計大全」を読んでから、少し機械式時計にハマッてます。高級時計は買わんけど。買えんけど。でも、機械式時計がすごいことは、よくわかりました。クオーツショックからいかに復活したのか、そしてブランド戦略は、みたいな話。機械式時計には、複雑機構というのがあります。バネと歯車の組み合わせだけで、何千年も調整する必要にないカレンダーをつくったり、チンチンという音で現在時刻を表現するミニッツリピーターというのがあったり。そしてトゥールビヨンという超複雑機構。これが搭載されてるだけで、腕時計は数百万円から数千万円になってしまうというトゥールビヨン。説明はややこしいので省きます。興味があれば、ここで。で、そのトゥールビヨンを、日本人のある職人さんが、独学の研究で、作り上げました。その経緯や苦労などを描いたのが「ジャパンメイド・トゥールビヨン」。人間って、すごいね。いや、すごい。
最近、僕の中では中島らもを再評価する動きが高まってます。改めていろんな文章を読み返してみると、面白い。破天荒な人生やけど、ものすごく魅力的。朝日新聞で繰り広げられたお悩み相談をまとめたのが、この「中島らもの明るい悩み相談室」。質問も面白ければ、らもさんの返答も秀逸。視点が、違う。お悩み相談の決定版やねー。相談の見出しを少しだけ並べてみよう。
「父のフン芸の理解に苦しむ家族」「まさに奇人!裸で料理する夫」「パンツをはいてくれない私の母」「留守中に棚や浴槽に隠れる夫」「ままごとで笑って別れ話する園児」などなど。読みたくなったでしょ?
中島らも再評価のきっかけど与えてくれたのは、須崎の「書肆織平庵」店主、敬愛する斧山さんですが、その斧山さんが紹介してたのが「鞍馬天狗のおじさんは」。チャンバラ映画の至宝、嵐寛寿郎の聞書本。まだ元気だったアラカンから、日本映画黎明期からの面白い話や、チャンバラに対する思いなどを、かの竹中労さんが聞き書きしてます。また、同時代の監督などのインタビューも交えて、古き良き日本映画の実像を描き出す。なにより、アラカンが魅力的。破天荒で想像を絶する人生やけども、こんなにも魅力的な人物だったのか。知りませんでした。今の世の中には居ない人物。今の世の中やったら大変な人物やけど。世の中、知らないことだらけ。いやー、面白かった。
そんな訳で、今月のイチオシは、「鞍馬天狗のおじさんは」。迷いなく、これ。すごい男がいました。そして活躍できた時代が、ありました。日本は、そんな国だった。