咲き始めたキンモクセイの、にほひ〔6769〕2021/10/27
2021年10月27日(水)晴れ!
昨日からでした。昨日、本社棟前の大きなキンモクセイから、やっと匂いが漂い始めました。もう11月になってしまうではないか、と心配してたけど、なんとか10月中に開花が始まったキンモクセイ。
まだ、満開には程遠いけど、たしかに、あの素敵な香りが匂い始めています。やっと、秋深し。
匂い。
こういう場合は「匂い」と書き、ネガティブなニオイの場合は「臭い」と書く。漂ってるのはキンモクセイの「匂い」。
「におい」は「にほひ」。いろいろ調べてみるけど、「にほひ」は、あまりネガティブな表現には使われてないみたい。悪臭のことを「臭い」と書いて「におい」と読むのは、一般的とは言えなかったみたい。いや、詳しく調べた訳ではないので、間違うちゅうかも知れません。
で、僕の好きな「大言海」で調べてみると、「にほひ」の項目に「匂い」はあるけど「臭い」はありません。たぶん、「臭い」は「にほひ」ではないのだ。「くさい」のだ。僕の想像では。
明治の巨人、大槻文彦先生が「大言海」で著した「にほひ」を、紹介してみよう。キンモクセイのにほひの中。カタカナで書かれてるけども、めんどくさいので、ひらがなで書きます。
おう。「面倒臭い」は「めんどくさい」で「臭い」は「くさい」だね。さて。
にほひ[匂]
(1)にほふこと。気色の映ゆること。少女などの美しく、気色のほのめき立ちて見ゆること。
(2)色のうつくしく映ゆること。色の光ること。艶。うつくしき艶なり。
(3)香。かをり。香気。薫。
(4)ひかり。威光。
(5)鍛ひに因りて、刀の刃の膚に、研ぎ上げて生ずる艶ある文理。錵に映えて立つもの。
(6)襲(かさね)の色目に、紫にほひ、紅にほひ、萌黄にほひと云ふは、濃き色の上重に、薄き色を取り合はするにて、余韻のひびきたる心なり。
(7)鎧の縅毛に云ふは、上の方は色濃く、下の方次第に薄く、果は白くなるものなり。萌葱匂など、皆然り。裾濃の反対なるもの。
いかがだろうか。かつての日本では、「にほひ」が意味することがいかに多かったことか。今はこの(3)の意味にしか使われることがないのは、ちと、もったいないねー。
そう言えば万葉集に、
青丹よし 奈良の都は咲く花の にほふがごとく 今盛りなり
とあるけども、この「にほふ」のニュアンスって、花の香りだけではなくって、上に書いたいろんな「にほふ」の意味を連想させるようなものだったのか、と、思ってしまいました。僕らの「匂い」と古代人の「にほひ」に対する感覚は、違ってたんでしょうねえ、きっと。たぶん。
そんな訳で、本社棟前のキンモクセイ。香りだけでなく、美しく青空に映える色、そして秋の光の美しさ、全部ひっくるめて、匂っています。