ジュー渓谷へ行ってみた〔6741〕2021/09/29
2021年9月29日(水)晴れ!
またまた時計の話で恐縮です。
子供の頃、精密機械である時計産業がスイスとか長野県とかで発展したのは、水と空気がきれいだから、みたいな話、まことしやかに聞いたことが、ある。ありますよね。社会科の時間かなにかで。ところがその話は、「機械式時計大全」によれば、「日本でしか語られていない非常によくできた伝説」なんだそう。知ってました?
そもそも、スイスの時計関連企業の多くは、ジュラ地方に集中してます。ジュラ山脈は、ジュネーブとバーゼルを結ぶ、スイスとフランスの国境地帯。そう。恐竜でお馴染みのジュラ紀は、そのジュラ山脈の石灰岩層が由来ね。それはそれは美しい、山と湖に囲まれた地域。行ったことないけど。
そこに時計産業が集中しているのは、別に、そこが水と空気がきれいだから、という理由ではなかったのでした。
そもそも、ジュネーブには、時計師はほとんど居なかった。時計産業の中心は、パリとかロンドンとかの大都会やったんですね。この地方の地場産業は宝飾加工。しかし、1541年からジュネーブを統治したのは、宗教改革者、カルヴァン。カルヴァンは、市民が華美な宝飾品を装着することを、禁じたのでした。困ったのは宝飾加工職人たち。でもカルヴァンは、実用品である時計に限っては装着することを認めたので、宝飾加工職人たちは、こぞって時計師に転業。それまでの技術が活かせますきんね。
もうひとつ。フランスなどカトリック国に居た、ユグノー(プロテスタント)の時計師が、宗教戦争の中で、大挙してジュネーブ、そしてジュラ地方へと移住してきたのも、大きかった。時計師に新教徒が多かったのは、第二次産業の担い手に新教徒が多かったから、と言えるのかも知れませんな。「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」は読んだねー。昔。
そんな訳で、現在、世界を牽引する高級時計メーカーは、ジュネーブやジュラ地方に集中しているのでした。例えば、一昨日も紹介した、世界最高の時計企業と言われるパテックフィリップは、ジュネーブ。行ってみました。ここ。素敵やねー。
工房は、ジュネーブ郊外の、ここ。隣はロレックスやないかい。ここには、世界3大時計メーカーのひとつ、ヴァシュロン・コンスタンタンの工場もあるね。
で、ジュネーブから北、ジュー渓谷の方へと足を伸ばすと、これまた世界3大時計メーカーのひとつ、オーデマ・ピゲの工房。お洒落やねー。お、ブレゲもあるぞ。そして、ジャガー・ルクルトというマニア好みのメーカー工房も、ここ。やはり、機械式時計の工房は、山と水が似合う。でもまあ、華美を禁じたカルヴァンもビックリ。一昨日のこれとかね。
さて。
美しい空気と水は、たしかに精密機械産業に適しているとは言え、絶対条件ではありません。日本でも、諏訪精工舎が信州にあったとは言え、セイコーウォッチの工場は東京、亀戸にあったりしたのでした。
確かに、イメージって大事。イメージがブランド価値を高めるのも、ひとつの真実。
なかなか、高知県と「牛乳」のイメージって結びつきにくいですよね。どうしても北海道とかのイメージには、負けてしまう。でも、搾乳してから店頭までの時間で言えば、東京や大阪に於いても、ひまわり「乳しぼりをした日がわかる低温殺菌牛乳」は、北海道産の牛乳より遥かに遥かに圧倒的に短いのであります。そして、牛乳は、産地よりも、鮮度。新しければ新しいほど、つまり搾乳してから時間が短いほど、おいしいというのも、真実。
だから、これからの努力で、イメージを作り上げていきます。この美しい風景の中でつくられる牛乳って、美味しいよねー、と言われるように。