レンガ塀から見えてくる歴史〔6482〕2021/01/13
2021年1月13日(水)晴れ
冬晴れ。適度に冷え込んで、高知の冬らしい朝になりました。心地よい、身が引き締まる、朝。
最近、歯の治療で、升形の織田歯科医院さんに通ってます。このにっこりでも幾度かご紹介してきた、高知で一番古い歯医者さん。初代の織田信福さんは、明治のイケメンとして話題になり、いろんなところで取り上げられてます。
僕は、子供の頃から、この歯医者さんにお世話になってきました。子供の頃の僕が治療してもらったのは、大正14年12月に建てられた洋館の歯医者さん。戦禍をくぐり抜けた、貴重な建築の洋館。その洋館での診療は2015年9月で最後となり、今は新しい建物で、5代目院長を中心に頑張っておられます。
その素敵な洋館や、高知大空襲でB-29が投下した焼夷弾の弾痕について以前にも書いたけど、今日はレンガ積みの話。そう。僕の好きなレンガ積み。
歯科医院敷地南側には、今も古いレンガ積みの塀が残ってます。たぶん、大正14年に洋館が建てられたときから存在する、レンガ積みの塀。もしかしたらその前からあったのかも知れんけど、洋館が建つ前は日本建築の家やったので、レンガ塀ではなかったと考えるのが順当でしょう。
写真をご覧ください。
こうやって見てみると、なんとなく織田歯科医院の歴史が見えてくるではありませんか。見えてきませんか?
まず、下段。なんとかフランス積みにしようとしてるけど、ちょっとイレギュラーな部分も散見される積み方。もう、ご存知ですよね。フランス積みは、仁淀川町の川口橋橋脚で採用されてるような、美しい積み方。
トンツーーートンツーーートンツーーー
ツーーートンツーーートンツーーートン
トンがレンガの短い面で、ツーーーが長い面。それを交互に、そして上下も交互になるように積むのがフランス積みだ。フランドル積みとも言います。かなりこだわりのある、洒落た積み方、フランス積み。ついてきてますか?
中段も、同じようにフランス積みが基本にあるけど、かなり乱れが見えます。割れたり、目地からコンクリが盛り上がってる部分もあったりして。
そこで考えました。この塀は、おそらく、フランス積みのレンガ塀として構築されたのだ。たぶん大正14年に。洋館建築に合わせて。しかし昭和20年7月、米軍、B-29による空襲に見舞われる。このレンガ塀も、かなりの被害を被り、大規模に破損したのではないだろうか。戦後、それを、補修した。幸いなことに、レンガ自体はほとんど残っていたので、それをコンクリを使いながら補修して積み上げたのが、この塀なのではないか。だから、下段よりも中断に、補修の跡が多いのだと考えました。
上段はよくある長手積みだから、更に後世、新しく積まれたものであることは一目瞭然。
上段と中段の間にコンクリートの層が少し見えます。空襲で欠損したレンガの分が、そのコンクリで埋め合わされてるのだろう。ああ。見てきたように、妄想する。
このレンガ積みには、イケメン信福さんの洒落た想いと、戦争、空襲の痕跡、そして先代の想いを残しつつ受け継いでいこう、という子孫の意思。そんなものが詰まってるのではないか、と、勝手に想像して、歯の治療に来るのを楽しんだりしてるのでした。
そんなこと考えながらだと、歯医者さんに来るのも楽しくなります。子供の頃は嫌で嫌でたまらんかったけど。