ひまわり文庫2021年1月の新刊〔6473〕2021/01/04
2021年1月4日(月)晴れ!
今年最初の月曜日。今日が仕事始めの方も多いと思います。良いお正月でしたか?
そんな訳で早速ではありますが、新年初めてのひまわり文庫、1月の新刊。
なんか、多いっす。特に、今月は、TSUTAYA中万々店でうっかり買うてしもうた本が、多い。スーパー書店員、山中さんの術中にハマってしまった。店内うろうろするだけで、なんか楽しくなる本屋さん。そして手書きのPOP、ディスプレイが興味をそそるそそる。そそりまくって、ついつい買うてしまうのでした。
今月新刊16冊(多い!)のうち、7冊が、山中さん由来。まずはそんな山中本から、紹介していこう。
なんと申しましても「ザリガニの鳴くところ」。ここでも熱くご紹介したように、第3回山中賞受賞作。この本、ほんとうに評価が高いようで、いろんなところで聞きました。そしてその評価に相応しい感動の名作。たぶん、名作として歴史に残る本になるんでしょうね。
ソン・ウォンビョンの「アーモンド」は、第2回山中賞受賞作。これもさすがに面白かった。
現代日本のミステリらしいのが、太田愛「犯罪者」上下巻。店内の派手にして魅力的なPOPにつられて買いました。読みました。上下巻あるけど、一気に読みました。最近の日本のミステリって、こういうの多いけど、「犯罪者」はよくできてます。太田愛、ちょっとチェックしとこう。
で、お店の入り口近くに平積みしてて、紙で工作した手作りの模型が添えられてたのが「赤ずきん旅の途中で死体と出会う」。ここで紹介できんのが残念ですが、あの工作は、一度見てもらいたい。ハンドル回すと、赤ずきんちゃんが現れる。それはそれとして、有名な童話の主人公たちが繰り広げるドタバタと、赤ずきんちゃんの切れ味鋭い推理が、バカバカしくも、面白い。これ書いた青柳碧人さん、面白いとこに目、つけたねー。技量もなかなか。
「むかしむかしあるところに死体がありました」は、その青柳さんが最初に書いた、昔話を題材にした謎解きミステリ。これで味しめて、赤ずきんちゃんに発展したんですね。
このバカバカしさと本格謎解きのアンバランス、意外にイケます。こういう本、山中さんに紹介してもらわんかったら手に取ることもなかった訳で、山中さん、ありがとう。
ここまでは全部エンタメ小説やけど、「地下をめぐる冒険」は、ノンフィクション。ニューヨークの地下に広がる世界を探検する著者。パリの広大な地下墓地で迷う著者。そして、現実に存在する、地下愛好家たち。これ、ちょっと、ツボでした。以前「洞窟ばか」で洞窟マニアを紹介したけど、地下愛好家は、また、違う。そういうマニアの話や、洞窟の奥の古代人の信仰の話など、なかなか面白い本でした。さすが、山中さんご推薦。地下鉄の廃道とか、カタコンブとか、一人で散策してる人が結構居る、という話は知らんかった。世の中、いろんな人が、います。ちょっと、やってみたい。
山中さん推薦だけで、もうこんなに長くなってしまった。
こっからは、通常モード。「ザリガニの鳴くところ」では、アメリカの湿地帯の大自然が舞台やったけど、世界各地の、様々な「樹木」にスポットライトを当てて、美しい文章で哲学的に考察してるのが、D.G.ハスケル「木々は歌う」。樹木と生物、ヒトが、どのような深い関わりのなかで生きているのか。考えさせられる佳い本。結構、重たい。
重たいので言えば「知略の本質」。優秀な戦史研究家が、独ソ戦、イギリスとドイツの戦争、インドシナ戦争からベトナム戦争、イラク戦争の分析を通じて、誰のどういう行動、政策が勝利をもたらしたのか、敗北をもたらしたのか、解説していきます。こういう視点で見る歴史は、勉強になる。重たいけど勉強になりました。
「万葉ポピュリズムを斬る」は、東大教授である万葉学者の品田悦一先生が、新しい年号を決めるに際して万葉集にこだわった人たちの、浅薄にしてご都合主義の万葉集理解をぶった斬った、本。帯がなかなか「過激」だ。「そこのけ御用学者ども!数ある便乗本よ、焼却炉の灰となれ。天皇から庶民まで、という虚構を、権力は利用しつづける」と容赦ない。白川静先生の「初期万葉論」「後期万葉論」を愛読する僕としては、なかなかにツボの本でした。
「世界の辺境とハードボイルド室町時代」は、以前「耳鼻削ぎの日本史」で紹介した中世史学者の清水克行さんと、アフリカなどの辺境を探検し、住み、その実情を描く高野秀行さんの対談本。アフリカのソマリ人社会と日本の室町時代が驚くほど似ている、という論点から始まって縦横無尽。
マーク・ハーツガードの「ビートルズ」は、ビートルズ評伝の古典。最近ビートルズにハマってるけど、これ読んだことなかったので、改めてビートルズの真実、すごさ、魅力を感じること、できました。湯川れい子訳だし。それにしても最近、今更ながらに思います。ビートルズって、すごい。
最後。「字が汚い」。僕よりちょっと年下の、灘、東大出身編集者にしてライター、新保信長さんが、自分が書く字の汚さに愕然としつつ、それは訓練でなんとかなるものなのか、字が汚いとはどういうことなのか、本当に字が汚い人は、字を書くということをどう捉えているのか、などなど、面白おかしく書いてます。実際、この人の字、だんだんと上手になるんですね。文字にコンプレックスを持ってる人、読んでもいいけど、読まんでもいいです。これ読んだら字が上手くなるかというと、そうでも、なかった。いや、個人の努力の問題です。僕は、字が汚い。
そんな訳で、長くなりました。
今月のイチオシは、やはり、どうしても、「ザリガニの鳴くところ」をあげん訳には参らんでしょうねー。いや、世界の地下マニアを描いた「地下をめぐる冒険」も捨て難いし、「知略の本質」も本当に面白かったし、意外にも「赤ずきん旅の途中で死体と出会う」にもハマッてしまいましたが、やはり世間的には、「ザリガニの鳴くところ」。
さあ。本年も本格的に始まりました。張り切って参りましょう!
よろしくお願い申し上げます!