ひまわり文庫2020年12月の新刊〔6440〕2020/12/02
2020年12月2日(水)晴れ!
そんな訳で、ひまわり文庫12月の新刊。今月はなんか少なめやね。9冊。ちょっと、音楽聴くのに時間費やしたきかも知れません。
まずは、上段。「天色天晴ジョン万」。これは、高知で競馬新聞「中島競馬號」を出しておられる中島出版印刷の中島社長さんが渾身の力を込めて書かれた本。幕末から明治を駆け抜けた郷土の偉人、ジョン万次郎の評伝を小説形式で書きたい、という思いは、昔から持っておられた様です。よく史実を調べて書いておられますね。なにより、ジョン万に対する思いが溢れています。中島社長、ありがとうございました!
中段。「時間はどこからきてなぜ流れるのか」。人間の脳は錯覚を起こすようにできている。時間が経過する、という感覚がどうして生まれるのか。そしてそもそも時間が経過する、とはどういうことか。物理学では、時間は「流れている」のではなく、空間と同じように、ただ存在しているもの。それを流れていると「感じる」のは何故か。その感じ方や思考が、光速などに比してあまりにもゆっくりしているのは、何故か。などなど僕が好きなテーマ満載で面白かったです。これ、極めると哲学になりますな。
「生と死を分ける数学」は、新聞の書評欄で見て、書いました。数理生物学者である著者が、数学の使い方で、様々な勘違いが生まれたり世論を操作したりできる話を書いてます。統計数値のすごさと危なさ。勘違いのしやすさ。マスコミや政府の統計を利用したトリックをこれでもかという感じで事例をもとに解説。人生と数学の関係ね。
近年、数値を上げて実績を自慢する政治家さんが居りましたが、それに使われてた数値、統計の危険性がよくわかります。フェイクニュースもこうやって生まれるのでしょうなー。
昆虫が大好きな養老孟司さんと、ゴリラ学の権威、山極寿一先生の対談は、その名もズバリ「虫とゴリラ」。現代の、ルールを重視して「共感」や「感性」を軽視する風潮に、虫やゴリラの生態を通して警鐘を鳴らすような対談。文明論、文化論として、なかなか興味深い本でした。さすがさすがのお二人。やっぱし知性は大事やねー。
下段。海外のミステリもの二冊。痛快丸かじり、頭リフレッシュ本は、ロバート・ベイリーの「黒と白のはざま」と、アンソニー・ホロヴィッツの「メインテーマは殺人」。前者は、こないだ読んだ「ザ・プロフェッサー」の続編。いや、いかにもアメリカのハードボイルドらしい展開で、楽しゅうございました。後者は、イギリスの、ホームズの系譜のミステリ。これはまた、いかにもイギリスらしい舞台設定と展開と修辞法で、楽しゅうございました。アメリカ、イギリス、それぞれの「らしさ」が楽しめ、日本のミステリの「らしさ」を改めて認識することも、できます。
さて。僕が街と地形に対して興味を持つきっかけになったのは、陣内秀信先生の「東京の空間人類学」を読んだから。僕のバイブル。歴史的名著。で、その陣内先生が、その後の研究を通じて得られた所見をもとに新しく書き下ろされたのが「水都東京」。もうね。我が意を得たりどころではない。実は僕は、以前、陣内先生の講演を聴き、一緒に飲んだことがあります。これはちょっと、自慢。高知も、都市計画を考えるのに、こういう視点を持った人を入れんといかんね。いかん。
最後は「街場の日韓論」。近年厳しい日韓関係。それに対する、様々な分野の、様々な論客が、それぞれの視点で語っております。内田樹先生の依頼に応じて。中でも平田オリザ先生の文章は、心に刺さりました。そうそう。平田オリザ先生も、以前高知で講演を聴いたことがあり、一緒に飲みました。これもちょっと、自慢。
そんな訳でちょっと少なめの12月の新刊。イチオシは、なんと申しましても「水都東京」でしょう。都市論の決定版。街を考えるなら、これ、読んどかんとね。
コロナがまた、増えてきました。こんなとき、家でゆっくり読書三昧もいいと思います。外は寒くなってきたし。