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今日のにっこりひまわり 毎日健康社員日記

ひまわり文庫2020年10月の新刊〔6378〕2020/10/01

ひまわり文庫2020年10月の新刊

2020年10月1日(木)晴れ

そんな訳で今日から10月。読書の秋。ひまわり文庫、10月の新刊をご紹介しましょう。多いっすよ、秋なので。内容も、ちと、濃いものになりました。

 

左上。「最暗黒の東京」は、明治中期、日清戦争前の東京の、最下層の人々の暮らしを、その「貧街」に入り込んでレポートした日本のノンフィクションの原点と言われる本。松原岩五郎というおじさんが「国民新聞」に連載、好評を博したもの。いわゆる明治の「スラム」がどんな風景だったのか。どんな職業のどんな人が、どのように生活していたのかを臨場感を持って描き出しています。

 

同じ東京の風景でも、「日和下駄」はまた、違う。かの永井荷風先生が大正の初めに書いた東京散策記「日和下駄」。さすがの文章力、表現力で、明治から大正にかけて変化していく大東京の風景を描いており、とても興味深いレポートに仕上がってます。面白い。以前から明治の東京の風景をレポートする作品をいくつか読んできたけど、これは流石の永井荷風。テーマが「日和下駄」「淫祠」「樹」「地図」「寺」「水」「路地」「閑地」「崖」「坂」「夕陽」ですきんね。ブラタモリもびっくり。あと、地域にスポットを当てた「荷風随筆」というのも掲載されてて盛りだくさん。

 

その「日和下駄」にインスパイアされて現代に生きる女性ライターが現代の東京を散策、探検して書いたのが「日和下駄とスニーカー」。地形と街という最近流行のテーマやけど、なかなか面白く描けてます。副題が「東京今昔凸凹散歩」ですきんねー。ちょっと流行過ぎて、買うのに躊躇したけど、まあ、面白かったです。

 

都市空間のなかの文学」は、分厚くて、最初の部分は研究報告風でとっつきにくかったけど、読んでみたら面白い。最高に面白かったので、分厚いにも関わらず結構一気に読めました。明治大正昭和初期の、様々な文学で表現されている都市。どんな文脈の中でどのように都市が表現されているのか。そしてその都市空間は、実際にはどんな空間だったのか。例えば川端康成が「浅草紅団」で描いた浅草は、実際、どんな街でどんな暮らしがあったのか。

いやー、素晴らしい視点と掘り下げと考察やね。感服しました。都市論というのは色々あるけど、こんな角度の都市論、都市エッセイがあったとは。東京と文学、みたいなのを語るためには、この本読んどかなくっちゃ。最初に紹介した「最暗黒の東京」は、この本で触れられてたので、買った本なのでした。

 

夏目漱石の「彼岸過迄」も、「都市空間のなかの文学」で取り上げられてました。いやね。最近、夏目漱石にちょいと嵌ってます。告白しましょう。「吾輩は猫である」、今回初めて読みました。読書がどうらたとか、偉そうなこと言うてますけど、こんなにも有名な必読書を読んでなかったボクなのでした。

夏目漱石って、「草枕」とかもそうやけど、ストーリーにはあんまし関係なく文章が素敵なのね。最近嵌まってるのは、漱石先生の、「文章」。比喩の仕方であったり、名詞や動詞のユーモラスな選択であったりが、すごい。頭いいんですね、とても。こんな文章、とてもではないが書けない。当たり前やけど。お手本にする訳やないけど、次から次へと繰り広げられる文章表現には参ってしまいました。いやね。ストーリーはあんまし気にして読んでません。漱石先生、ごめんなさい。

 

最近、昔は良かったとか、昔はどうだったとかいったことを書いた本、なんとなく増えました。そんな中で買った本、2冊。

1964東京ブラックホール」は、新聞書評欄で見かけて書いました。あの、東京オリンピックが開催され、日本は元気な高度成長で、三丁目の夕日のように活気が溢れていたというイメージの1964年は、実際は、労働者が搾取され、ひどい格差社会で、街は汚く、政界財界も汚く、公害が溢れる酷い時代だった、という話。記憶が漂白されて、理想化されていくことに警鐘を鳴らす。

東京オリンピックの後、とんでもない社会経済状況に落ち込んでいく日本を救ったのはベトナム戦争のもたらした景気であった。

 

1971年の悪霊」は、また違った思想、視点で、左翼思想花盛りだった1971年の社会や思想を分析し、それが現代にもたらしているものを描こうとしていますね。はい。

 

下いって、「五・一五事件」。あの時代の右派思想は何だったのか。よくある戦後平和主義的視点からではなく、当時の右派というもののありようを詳しくみていくことで、「五・一五事件」の実際を解き明かしていこうとしています。思想的に、そうかな?と思う部分もあるけど。社会を動かした大事件というのは、様々な視点、様々な見方があって、歴史の評価ってのは難しいと思いました。

 

本屋さんに、山内一也先生のウィルス本が出てたので、思わず買ってしまいました。「ウィルスと人間」。山内先生は言わずと知れた日本のウィルス学の泰斗。以前、「ウィルスの意味論」読んで眼から鱗が大量剥落したので、買いました。ウィルスのこと知るには、山内先生の本読まなきゃね。

 

ここで番外編。「交通公社 時刻表 1970年10月」だ。こないだから幾度触れてきたから、みなさんご承知の通り。万博の年の時刻表。僕が時刻表マニアになりかけてた頃の時刻表。これを眺めるだけで、半世紀前に時間旅行できます。ああ。至福の時間。また、たぶん、このにっこりでもこの時刻表を使ったネタが繰り広げられることでしょう。我慢してください。

 

最後。「ヨーロッパ世界の誕生」。

ベルギーの歴史学者、アンリ・ピレンヌ先生が1935年に書かれた本。僕らが「暗黒の中世」と呼ぶ、ローマ帝国の技術や科学や経済や芸術や思想などが廃れてしまったヨーロッパの中世が、どのようにして誕生することになったのか。ローマはなぜ、廃れ、忘れられてしまったのか。

ゲルマン民族の侵入にその原因を求める研究は多いけど、そうではないとピレンヌ先生は喝破してます。ゲルマン民族も、侵入後、ローマ化されていた。フランク王国のメロヴィング朝までは。そこにマホメット(今はムハンマドという表記が多いね)が登場してイスラムに席巻され、地中海の交易などをすべてイスラムに握られてしまい、コンスタンチノープルと西ヨーロッパが分断され、そしてローマ世界が破壊され、あの、中世が訪れることになった、という話。フランク王国はカロリング朝になり、シャルルマーニュ、つまりカール大帝の時代からが、本格的中世の始まりとなったという説を、ほんとうに、とてもわかりやすく書いた本。説明、長いですか?

いや、この本、1935年に書かれた訳やけど、いまだにヨーロッパの中世を考える議論の中心にあるのでありました。ヨーロッパの中世始まりについて、いままで僕が抱いていたイメージが覆った本。

今月のイチオシは、これですね。

この分厚い本、月末に読みました。

月初に読んだ分厚い本、「都市空間のなかの文学」が今月のイチオシかと思ってたらまさかの大逆転でした。いや、どっちも凄い本やけど。

 

そんな訳で秋の夜長、読書三昧で過ごすのもよろしいかと。まだ、コロナは終息せんし。


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