江戸から東京へ、小林清親の世界〔6344〕2020/08/28
2020年8月28日(金)晴れ!
暑い。先週発表されてた週間天気予報だと、今週は雨が降り続くようになってたのにね。この時期、天気予報士はなかなか大変。ご苦労様です。まあ、晴れて嬉しいけど。
さて。この「都市空間のなかの文学」という本。
このにっこりでは、田山花袋とか国木田独歩とか馬場孤蝶とかが、明治初期からの東京の風景を、文学の中で描いているのを、今年になってから、幾度か書いてきました。まだ、コロナがこんなにかるとは思ってた頃に。
そんなのにハマってた頃、「都市空間のなかの文学」という題名に惹かれ、買ってしまってた、この本。でも、入手してみると、なかなか分厚い大著。最初の方のページに書いてる内容(空間のテクスト、テクストの空間)がかなりマニアックで学者風で難解だったので食指が伸びず、しばらくそのままにしてました。
してましたけど、そのままにしておくのもナニなので、頑張って読み始めてみると。面白い。とっても面白いのでした。内容は濃いし分厚いけど。
で、この本で幾度も、頻繁に引用されてるのが、小林清親「東京名所図」。明治初期の、江戸の町と文明開化とが綯交ぜになって変わっていく、儚いといってもいい短い時代の風景を、浮世絵に西洋画を綯交ぜにした不思議な技法で描いた作品は、とても興味をそそりました。そこで、買ってしまった「東京名所図」の図版。いや、期待に違わぬ面白さ。はやく読んどくんだった。
しばらく東京へは行けそうもないけど、この図版片手に散歩したら、東京散策の魅力が7倍くらいにはなると思いました。
小林清親さんの絵は「光線画」と称されたそう。
「都市空間のなかの文学」には、この「光線」という言葉について、こう書かれてます。
「〈光線〉という何の変哲もない漢語が、明治の初年にはたいへん斬新なキャッチフレーズとなりえたことを想像するのは意外に難しい。」
で、この「光線画」というキャッチフレーズを清親に与えたのは、このにっこりで触れた岸田劉生の父にして目薬「精錡水」を作って成功した岸田吟香かも知れない、と、妄想してるんですね。「都市空間のなかの文学」の前田先生は。「精錡水」のトレードマークである中年男の絵は、清親のデザインであるとのことだし、一番有名なこの「海運橋(第一銀行雪中)」で中央の女性がさしてる傘に書かれた「岸田」は、「精錡水」の宣伝用の傘とのこと。ああ。なんというシンクロ感。
しかも。今、高知市立自由民権記念館で開催中の企画展「漫画が描いた明治の時代」で紹介されてる團團珍聞の挿絵を担当してたのも清親さんなんだそう。エヴァンゲリオンもびっくりのシンクロ率だ。
いかん。あまりにも書きたいことが多すぎて、いかん。
今日は「光線」について書くつもりやったけど、それは次回にします。
ともあれ、良い本に出会いました。良い本との出会いは、人生の醍醐味のひとつ。得した気分になれるもの。
ちょいと得した気分の中で、一日がはじまります。