めもあある美術館〔6320〕2020/08/04
2020年8月4日(火)晴れ!
誰しも、なぜかはわからんけど、妙に思い出に残ってるものって、ありますよね。たぶん、みんなそれぞれ、いくつかあると思います。
こないだ、突然、ある物語を思い出しました。それこそ、唐突に。たぶん、ひまわり文庫今月の新刊でご紹介した「ことばの危機」で、国語の教科書のこと、読んだから。思い出したのは、小学5年か6年のときの国語の教科書に載ってた物語。「めもあある美術館」。覚えてますか?
記憶があやふやだったので、ネットにて「メモアール美術館」で検索してみたら、「めもあある美術館」だったこと、わかりました。しかも、今もファンが多くて、国語の教科書に載ってたことを覚えてて懐かしんでおられる方が多いことも、判明。なるほど。そうか。
作者は大井三重子さん。仁木悦子さんという名前の方が有名な、推理作家にして児童文学者ですね。最初は児童文学から始まり、女流推理作家として活躍、というのは、僕が親しくさせて頂いた直木賞作家、故坂東真砂子さんにも通じるもの、あります。
大井三重子さんは、1928年生まれ。まだ20代半ばの頃に「めもあある美術館」を書いたと言いますから、1950年代でしょうか。4歳で胸椎カリエスを患い、歩行不能となった大井さん。寝たきり生活のなか、独力で学び、素晴らしい兄に支えられたりしながら成長、すごい作家となったのでした。
さて。どっかでその「めもあある美術館」を読めんものかと探してみたら、ありました。大井さんの童話集「水曜日のクルト」。この本には「めもあある美術館」を含めて6編の童話が収められており、若かりし頃の大井さんの素敵な作品を楽しむことができるのでした。1976年に出版され、一旦絶版になってたのが、2009年に復刊したようです。
早速、ネットで購入。久し振りに「めもあある美術館」を読んでみたのでした。これを読んだのは小6の時だから、もう、半世紀近くも前のこと。でも、覚えてました。鮮明に。記憶通りの物語。ただ、挿絵は、違ってました。教科書にも挿絵があって、それはおばあちゃんの絵で、おばあちゃんの顔がアップになってるみたいな絵だったような記憶が微かにあるけど、違ってたらごめんなさい。なんせ、半世紀近く前ですきに。
小学6年生のある日の授業。順番に当てられて、教科書の「めもあある美術館」を読み進めていたときのこと。僕の順番になり「フロ屋と大衆食堂とのあいだのろじ」を「大衆浴場のあいだのろじ」と読み違えて笑われたこと、昨日のように思い出します。
内容が不思議で、とても印象深かった、「めもあある美術館」。あらすじは、いくつかのページでも紹介されてますね、こんな感じで。
自分の人生が、絵画になって刻まれていく美術館は、誰しも持っている美術館。そして、「今」から先にも真っ白いキャンバスが並び、そこにどんな絵が飾られるのかは自分次第。
小学校の時に教科書で読んだ物語ですが、あれから、僕の美術館には、あんな絵やこんな絵が並んでしまいました。
でもまだ、この先にも、真っ白いキャンバスが並んでいるのだ。
と、思いました。
「めもあある美術館」。いい話です。
その他の物語も、今はちょっとない感覚の、素敵な話。還暦近くなってから童話を読むというのも、また、いいもの。教科書を覚えてる方も覚えてない方も、ぜひ、読んでみて下さい。
いい話です。