ひまわり文庫、2020年7月の新刊と旧刊〔6286〕2020/07/01
2020年7月1日(水)晴れ
昨日は降ったけど、今日は良いお天気。コロナ騒動は収束しないまま、7月になってしまいました。夏。なかなか先行きは見えんけど、みんな頑張ってます。そんな7月の、ひまわり文庫新刊と旧刊。
今月は10冊。ちょっと少なめやけど、内容は濃いよ。早速参りましょう。
これ、金高堂の歴史書コーナーを物色してて、買ってしまいました。あのコーナー、いいですよ、なかなか。なかなか深い歴史の本や、興味深げな本、どっさり。そんな中、目についたので、ページをめくってみると、ハンニバルとかウェルキンゲトリクスとかいう名前。おう。ウェルキンゲトリクスではないか。これは面白そう。下巻の表紙はゲバラだし。トロツキーにリー将軍ときたもんだ。これは面白そう、ということで書いました。
上巻にちょっと馴染みのない名前もあったのは、この本、かなりフランスに特化した内容になってたからですね。だからウェルキンゲトリクスが取り上げられてたのか。チェーザレ・ボルジアとかは、居ないし。
一人一人の内容、もうちょっと深かったらいいと思いました。でも、大変勉強にはなりました。
勉強になったと言えば「中世史講義戦乱編」と「雑兵たちの戦場」。この二冊は、この春から社会人になったけどリモート研修とかでまだロクに社会人になっていないJr.2号が、就職記念に送ってくれたもの。彼は歴史マニアで、僕のツボを心得てます。
「中世史講義戦乱編」は、保元・平治の乱から文禄・慶長の役まで、度重なる戦乱の内容を詳しく紐解きながら、日本という国の中世の姿を浮き彫りにしてます。なぜ、中世には全国規模の内乱が頻発したのか。その構造的要因は何なのか。ちゃんとした研究者が、歴史を、ちゃんと書いた本。
「雑兵たちの戦場」は、中世の戦乱の実像を雑兵たちの視点から解説してくれる佳本。そこには、人と物の略奪の歴史があり、それに対抗する村人の営みが、あった。キレイごとではない、泥々しい、目を背けたくなるような真実が、中世の戦場にはありました。掠奪は、軍の存在の中に構造化されていたという、日本の中世。
「未来のルーシー」は、最近レンマ学やアースダイバーで有名な宗教学者にして思想家にして人類学社、中沢新一と、霊長類学者にして人類学者にしてゴリラ学の権威にして京大総長の山極寿一の対談本。思想的にかなり交わる部分もある両者が、いままで繋がってなかったことが不思議。西田哲学や今西錦司の思想などが縦横無尽。かなり難解な議論も繰り広げられるけど、深く深く考えさせられます。現代の社会のこと。未来の僕らの在りようのこと。この二人の議論から、しばらく目が離せんと思いました。
ここまではなかなか濃い内容の本ばかり。
なので次はちょっと、軽いの。「漱石と鉄道」。最近のにっこり、時刻表とか鉄道の話が多いけど気にしないでね。この本は、漱石の小説にかなりの頻度で出てきて、しかも小説の中でかなり大切な役割を担っている鉄道のことを検証した本。当時の時刻表などを丹念に調べ、実際、どんな列車をモデルにしていたのか、などなど。やはり鉄道マニアは、すごい。しょうがないね。でも、漱石にとって鉄道とは、というテーマは面白いと思いました。
軽いと言えばいちばん軽いの。久々の万城目学「パーマネント神喜劇」。この作家、軽いけど味があって好きなんだけど、寡作やねー。久々に見かけたので、書いました。はい。面白かったです。さすがさすがの万城目学。
次も小説。しかもこれも、「パーマネント神喜劇」と同じく神様とかが題材になるけども、対極。真反対。崇高にして美しい小説「死者の書」。初めて読みました。もちろん作者は折口信夫。折口信夫の民俗学的なメンタリティが溢れ、そしてそこには歌人「釈迢空」としての美学も加わって、折口ならではの、他の誰にも書けない物語がありました。奈良の都とそれを囲む自然の美しさと霊的な存在が、静かに美しく描かれています。すごい。読んでみてよかった。
こんな文章、絶対に書けん。絶対に書けんけど、こんな文章には、憧れます。すごい。
高知工科大学の全卓樹教授が書いた「銀河の片隅で科学夜話」を、先月の新刊の一押しで紹介しましたよね。科学エッセイって世の中に溢れてて、そんなに期待してなかったから衝撃は大きかったっす。衝撃だったので、ネットで探して、全卓樹先生の、ひょっとしたら僕でも読めるかも知れない本を探して、買ってみました。こないだもご紹介した「エキゾティックな量子」。最近量子コンピューターとかが流行ってて、本屋さんにも量子関係の書籍が溢れてるけど、この本はやはり秀逸。さすが、全卓樹先生。たぶん全然理解はできてないけど、なんとなく知識が増えたような爽快感。やはり一度お会いしてみたいですねー。全先生。せっかく高知に居られるんだもの。
で、全教授、こないだも書いたけど、ツイッターで寺田寅彦について、触れておられました。「寺田寅彦はむしろ、複雑系物理学の世界的な先駆けとして(文人科学者としてだけでなく)物理学者としてもっと評価されるべきでしょう。」との文章は、我が意を得たり。
そこで、今月最後にご紹介するのは、ひまわり文庫には以前から所蔵してたけど、改めて再読してみた「寺田寅彦の地球観」。そう。先月惜しくも亡くなられた、高知大学名誉教授鈴木堯士先生が、その研究人生の中で強い強い影響を受けた寺田寅彦について、詳しく語った本。あらためて読んでみると、この本が僕に与えた影響にも甚大なものがあったことに、今更ながら気付きました。そう。これ読んでなかったら、僕は地学にハマることはなかった。それは、間違いない。
だって、ブラタモリで僕が喋った内容って、この本に書かれてる内容が基本になってるんだもの。
そんな訳で、旧刊ですが、今月の一押しは、これ。「寺田寅彦の地球観」。ぜひ、読んでみて貰いたいです。
昨日は輪抜け様。夏越の祓い。雨の輪抜け様、コロナの中の、輪抜け様は、いかがでしたでしょうか。潮江天満宮では、今年は露店を中止したそう。コロナの災厄を、お祓いしたい、今年の夏。
いろんなことが、いつもと違う今年の夏。
いつの間にか、もう、7月。なにがあろうと季節は巡り、時計は進む。
いつもとは違う夏やけど、頑張って張り切って、越えていこう。