メランジュの冬至〔6094〕2019/12/22
2019年12月22日(日)小雨
年末の日曜日。冬至。所用があって、県東部。田野へ行ってました。
世間は、クリスマス前の賑やかさに年の瀬のせわしなさが加わって、いつにない繁華な季節を迎えてることでしょう。弊社も、クリスマス用の生クリーム製造など、ピークを迎えております。
さて。以前、仏像構造線のこと、幾度も書きました。秩父帯と四万十帯の境界にある断層。稲生の石灰山や、三宝山の山裾を走る巨大断層。今は活動してないから心配は要らない、断層。
その南側は、西は足摺岬から東は室戸岬まで、一括りにして四万十帯と、地学では呼んでます。そう。今日は久々に地学ネタだ。
で。
その四万十帯の大部分を占めるのは、整然相。コヒーレント相とも呼ばれます。おう。コヒーレント。こないだ読んだ量子コンピューターの本にも出てきたぞ、コヒーレント。コヒーレンスにデコヒーレンスときたもんだ。なんか、この用語を使うと専門家みたいに聞こえるですね。
とにかく四万十帯で一番広い面積を占めるのは、コヒーレント相。整然相。せいぜんそう、と入力すると生前葬が出てくるけど、そうではありません。砂岩と泥岩からなる、結構単純な地層。
そうそう。南嶺でも、仏像構造線から南は砂岩になりますもんね。北側はチャートが多いのに。ついてきてますか?
さて。その、整然相が多い四万十帯だけども、そのコヒーレントに挟まれるように存在するのが、メバンジュ相。
フィリピン海プレートの沈み込みでできた付加帯で、長い長い年月に堆積してできてきた海洋プレート表面が、ムリムリムリムリっという感じで陸上プレートに押し付けられて圧縮され、複雑な地層が短い短い区間に圧縮されて見られるようになった、メランジュ。
ブラタモリでもやったけど、高知には、そんなメランジュの素晴らし露出が、いくつか見られます。ブラタモリでやった、ここ、西分メランジュもそのひとつ。でもね。
あの時、高知大学の橋本先生がいらっしゃったので、このメランジュの構造が理解できました。専門家の説明がなかったらね、なあなか素人ではわかりもうさん。
この崖。ここには、数千万年が圧縮されている。
一番遠い太平洋の彼方からプレートに乗ってやってきたのが、玄武岩である枕状溶岩。南の海でサンゴ礁だったものが、プレートとともに北上し、石灰岩。石灰岩よりも北で、プランクトンの死骸が堆積してチャート。
風に運ばれたチリや、熱水活動によるミネラルに富んだ沈殿物が固まった赤色頁岩。
日本列島から流れ出た細かい土が、沖で堆積した泥岩。
日本列島に近い場所で堆積した、砂岩。
そんな数千万年の歴史が、この数十メートルに圧縮され、見ることができるのが、ここ、西分メランジュなのでありました。すごいでしょ?
すごいのであります。
このメランジュが、プレートテクトニクスを世界で初めて、地層として実証したとも言われてることは、あまり知られてません。橋本先生に教えてもらうまで僕も知らんかったけど。
この赤っぽい石、赤色頁岩と思うじゃないですか。実はチャート。やっぱし専門家でないとなかなかわからん。ぜひ、こっからここまでは何年前に堆積したチャート、とかの説明板が欲しいところ。
火山活動とか、圧力による花崗岩化などがない、この四万十帯は、実にスッキリと、地球の営みの痕跡を見ることができる、貴重な貴重な地層なのであります。
年末の忙しいときに、なんて呑気な話題なんだろう。