陛下〔6033〕2019/10/22
2019年10月22日(火)晴れ
秋晴れ。天皇陛下即位の礼ってのが、本日行われるとのこと。
僕らにとっては浩宮さんが、天皇陛下になられました。
明治期から昭和の初めに、大槻文彦さんという一人の人物によって編纂された国語辞書「大言海」で、「天皇」の条項を見てみたら、シンプルでした。
天皇
天皇、又は天王の連声。
説明にもなってないね。上に重ねてあるのは、大辞林。三省堂の大辞林は、近年の国語辞書で、この段の説明のほとんどが天皇に関するものだから、かなり詳しい。
大言海の時代は、そもそも天皇陛下に言及する、天皇のことを説明する、などということが畏れ多くてできんかったんだと思います。特別そういったことが強調されたのは、明治から太平洋戦争までの間の、特異な期間のこと。
だから「大言海」には、「天皇」の説明は、ない。
では。「陛下」という項目、見てみました。これはまあまあ、詳しく書かれてます。
陛下
〔陛は堂に昇る陛(キザハシ)、陛下にある近臣を以って事を申すより起る〕
天皇、太皇太后、皇太后、皇后の敬称。又、皇帝の御号に副え奉りて尊称する語。・・・
大辞林でも、似たこと書いてます。
陛下
〔陛(階段)の下の近臣を通して奏上するの意〕
天皇・皇后・皇太后・太皇太后の敬称。単独で用いるときは、天皇を表すことが多い。
と、ある。同じですね。では、陛下、という言葉はいつから使われてるかと言うと、養老令の時に定められてると言うから、757年。でも、明治22年までは、陛下といえば天皇だけの敬称だったのでした。それを、三后、つまり皇后、皇太后、太皇太后にまで拡大したのが、明治22年の皇室典範なのであります。
それまでは、三后も、殿下だった。
てん-が 殿下
〔上を清音に、下を濁音に呼ぶを例とす。今は皇太子、皇族に限り、でんかと読む。〕
説明はいろいろあるけど、皇族以外でも、摂政関白も殿下と呼ぶそう。大阪の天下茶屋をてんがちゃやと読むのは、秀吉が関白として休憩した場所だから。皇族が休憩してたらでんかちゃやになったのかどうかは、知りません。
もし一部の人たちが言うてたように、今の上皇が「上皇」にならずに「摂政」になってたら、今までの慣例で「殿下」になったのか。いや、陛下から殿下に「格下げ」になることは考えられんので、史上初めて「摂政陛下」が誕生することになったのか。などといらん想像を膨らますのも、不敬なんだろうか。
上の大言海、大辞林の説明で気付くのは、天皇退位後の敬称が定められてないこと。そもそも、生前退位というのが想定されてないんですね。
今回、上皇という称号が復活し、上皇「陛下」となったのはご承知の通り。で美智子さまは、上皇后「陛下」になりました。皇太后ではなくて。
皇太后は、未亡人みたいな感じがして避けた、という話も、あります。知らんけど。
大辞林の第四版が発行されたのは、2019年9月5日。先月のことだ。だから、「陛下」の項目には慌てて「上皇」と「上皇后」を追加したんでしょうね。確認してないけど。
第四版の編集長、山本康一君は、高校の5年後輩みたいです。東大から三省堂という経歴らしいけど。偉い人だけど、後輩だから「君」で呼びました。以前、知事のことを尾崎君と呼んでたら(直接じゃないよ)、ヒトに叱られたことあります。う~ん。敬称って、難しい。