にっこり読者の基礎知識〔5881〕2019/05/23
2019年5月23日(木)晴れ
会社、本社棟2階の窓から撮影した、三宝山てっぺんのオブジェ。デジカメのズームで撮ると、こんな感じ。最近のデジタル機器ってすごいっすね。もしあの西洋城郭風の建物に誰かが居たら、こんなに離れてても手に取るように判る、という訳だ。誰かが居たら、怖いけど。
三宝山。秩父帯の南端、三宝山層群の模式地。石灰岩とチャートでできた山。すぐ南東を仏像構造線が走り、その南は四万十帯ね。これはにっこり読者の基礎知識。
さて。そんな訳で、あの山にはチャートが転がり、石灰岩が露出し、たくさんの化石がでてきます。そして、それにはペルム紀のものと思われるものや、三畳紀と思われる化石も。
つまり、あの山にもP/T境界がある訳ですね、たぶん。付加体なので、かなり複雑に入り組んでるはずで、キチンとしたP/T境界がどこにあるのかは、知りません。
さて。P/T境界。
地球上の生物の大量絶滅といえば、6550万年前の、恐竜が絶滅した大量絶滅が有名。これはもう、巨大隕石の激突が原因というのが、かなり有力な学説になってます。みなさんご承知の通り。でも、それが引き金にはなったかも知れんけど、それだけではなくて、例えばLIPSと呼ばれるような超巨大火山の爆発も影響してるのではないか、とか、様々な議論が行われてます。世界はそんなに単純では、ない。
その大量絶滅よりも遥かに規模が大きく、地球の歴史の中でも最大規模の大量絶滅と言われてるのが、ペルム紀末のものね。2億5100万年前の、地球上生物が9割以上絶滅したと言われるイベント。なんでそんな大規模な絶滅が起きてしまったのか。
その原因については、本当に諸説あって喧しい。超巨大火山説もあるし、そもそもパンゲア大陸形成が原因とも言うし、本当に様々。三葉虫が居なくなったのは、この絶滅の時。
ペルム紀と三畳紀の間なので、P/T境界。
で、一昨日の高知新聞に、新たな説が発表されたことについての記事が載ってました。日本のチームが発表した、なかなかに興味深い説。
その研究はチャート層の分析から始まった。と、書いてます。おう。チャートだ。チャートの分析で、ペルム紀末に、深海が500万年にわたって酸素欠乏状態であったことを発見したんだって。
あ、チャートというのは、海面で生活するプランクトンの死骸が沈殿し、海底に堆積したものが長い年月で岩石になったものね。にっこり読者の基礎知識。
P/T境界直前の地層を分析したところ、ヘリウム3という同位体濃度が異常に高いことがわかる。この原因として考えられるのは、地球外起源。それしか考えられない、というのが、今回発表したチームの見解。なるほど。
研究によりますれば、P/T境界直前の50万年間、ヘリウム3が多い。これは、宇宙から降り注ぐ粒子が異常に多かったことを示している。
50万年間、何故か、宇宙から大量の粒子が降り注ぎ、それによって地球規模で寒冷渦が進み、海洋水の循環が止まって酸素欠乏状態になる。これが大量絶滅につながった、という話ね。
こっから先は書いてないけど、深海の酸素欠乏が、生態系の底辺を支える生物が絶滅を引き起こすことにより、生態系全体に致命的打撃を与えた、ということなんでしょうね、たぶん。
これが正しいのかどうなのか、僕は知らない。知らんけど、面白い。
科学は、こうやって発展していくし、知らないことがわかってくるし、何より想像力が掻き立てられ、もっともっと新しいこと、本当のことを知りたいと思う願望が湧き上がってくる。
これこそが、生命の、進化。生きている、証。
あの三宝山に、この3億年の間にどんな歴史があり、ドラマがあったのか。想像するだけで、嬉しくなります。なりませんか?
ここ、にっこり読者の基礎知識として、重要なところです。