酸性土壌の話〔5530〕2018/06/06
2018年6月6日(水)小雨
昨日のお昼から降り始めました。梅雨。
昨日のにっこりで、手結山の火のこと、書きました。そして宇賀の長者伝説も。
で、青空文庫の、田中貢太郎「宇賀長者物語」を改めて読み返してみた。大町桂月に師事し、幸徳秋水とも交流があっただけあって、なかなか美しい文章を書きますな。こんな文章、書いてみたい。
その「宇賀長者物語」には、長者の娘と、幡多方面から拐われてきた若者、そして修験者が飛び込んだという悲しい池は、福浦という場所にある、と書いてます。
これは、現在の深浦だと思う。このお宮さんのある場所ね。
宇賀長者伝説は色々あるけど、田中貢太郎さんの手にかかると、こんなにも美しい。
宇賀はウカで、倉稲魂をウカノミタマと読むように、穀物の神様。お稲荷さんも、同じだ。つまり、穀物を司る神様は富の神であり、商売繁盛にもつながることから、宇賀長者伝説が生まれたのかな。たぶん、そう。
閑話休題。
今朝の写真は、上岡八幡宮のアジサイ。ここのアジサイは、青い。この、普通の種類のアジサイは、土壌が酸性だと青くなり、アルカリ性だと赤くなる。これは、こないだも書きました。
日本の土壌は基本、酸性。酸性土壌が多い。なので、青いアジサイが多い訳だけど、石灰などを使って土をアルカリ性にすると、赤くなる。それがアジサイ。
土壌が酸性なので、日本からは、考古学的な人骨の発見が少ない。本当に、少ない。土葬の時代が長かったけど、酸性の土に埋めてしまうと、ものの100年で溶けてしまうのが、日本なんでございます。
この青いアジサイが、人骨出土が少ないことに関係している訳だ。
では、希少な人骨はどんな場所で発掘されているのか。
2万2000年前の完全な人骨として有名な、沖縄の港川人。沖縄本島の南端近く、港川村で発見された訳ですが、そこは、この日本シームレス地質図で見ると、沖縄石灰岩。そう。石灰岩層がアルカリ性なので、現代まで残った人骨。
本土で古い人骨といえば、静岡県浜松市の浜北人。この人物も、一万数千年前の旧石器時代の人。で、発掘された場所は石灰石の採掘現場。また、石灰岩だ。アルカリ性。
かように。
アルカリ性土壌、つまり、赤いアジサイが咲く場所は、人骨が溶けずに残りやすい、ということがお解り頂けたものと思う。思います。
高知で有名な人骨といえば、土佐市の居徳遺跡。縄文晩期と言いますので、2800年前くらい。鏃の貫通痕がある人骨、ということで、縄文時代の社会に対する認識を改める議論を巻き起こした、有名な人骨。ここは堆積岩層ですが、すぐ北に石灰石の採掘現場があるので、アルカリ性土壌なのだと思います。
ポイントは石灰岩か。
そんな訳で、高知には石灰岩層、とても多いので、今後、高知から旧石器時代人の人骨が発見される、などということが起こりうるかも知れません。2万年前には人が住んでいたことは判っているのでね。
例えば、龍河洞なんか、どうなんだろう。
滝川人みたいに龍河洞人、などという人が居たら、楽しい。
青いアジサイを見ただけで、話が膨らんでしまう、梅雨の朝。