拙速〔8283〕2025/12/19
2025年12月19日(金)晴れ
僕が初めて網野善彦さんの本を読んだのは、確か「古文書返却の旅」だったと記憶します。まだ歴史とか民俗とかにさほど興味がなかった頃。で、その「古文書返却の旅」を読んだことがきっかけとなって網野先生や宮本常一先生の本を読むようになり、日本にはかつて今とは全然違う生活、考え方があったんだと改めて知ることで、歴史民俗の世界にハマっていったのでした。
その「古文書返却の旅」だったと記憶するけど、違ってたらごめんなさい。確か、霞ヶ浦の集落で、江戸時代からの、浦々で話し合い決定されてきたきまり事や約束事、権利関係などの古文書を借用する場面がありました。戦後、渋沢敬三さんとかが主導して実施された大規模な合同調査の一環で。
その際、浦では、人々が集まって古文書を貸し出していいかどうかの話し合いをする。それは、長い長い時間かけて行われる話し合い。誰がか主導して結論を急ぐ訳ではなく、皆から意見を聞き、検討し、次の意見を聞くという作業を延々と繰り返す話し合い。それは夜を徹して行われることもあり、幾日もかけて行われ、そして最後に、やっと結論が出る。
このやり方が、濃密な人間関係、利害関係が絡み合う集落をうまく運営していく為の知恵だったのではないか、と網野先生は言う。いや、言うてたと記憶するけど、違うてたらごめんなさい。
いつもの三省堂「新明解国語辞典」から。
せっそく【拙速】
まずくても出来上がりの速いこと。←→巧遅
拙速の反対語は巧遅。この霞ヶ浦でのやり方は、時間はかかるけど巧みな方法だったのでしょうか。かつての日本にあった時間の流れを、この話は教えてくれます。
自分も含めて、ともすれば、結論を急ぎがちな現代。トップダウンで決めてしまい、独裁的に進めたら、そりゃあ速い。そしてその方がいい場合も、ある。戦争とか緊急の危機事態ではね。
ただ、そのトップダウンの「トップ」が間違ってしまうと、それはそれで取り返しがつかなくなったりも、する。企業経営では、迅速な決断というのは非常に重要で、遅れると大変なことになってしまうこともあるけど、その「迅速な決断」が間違っていても大変なことになる。
急ぐ必要がなければ、拙速は避けたい。急ぐ必要がないくらい手前から、専門家や経験者の話を聞きながらじっくりと議論検討する、というのも必要。
そんなことを考える局面が多いような気がする、そんな年の瀬。今朝も高知新聞に踊る「拙速」の文字。
さあ、明日の南国市予想最高気温は21℃。明後日の予想最低気温が12℃。クリスマス前に。地球温暖化対策は、これはもう待ったなし。陰謀論などに惑わされず、早急に対策を講じる必要があります。
急ぐべきは急ぐ。じっくり議論すべきは議論する。世の中、そうやってより良い方向へと進んでいくのだと思う、そんな年の瀬。
