村野藤吾と知事公邸〔8092〕2025/06/11

2025年6月11日(水)雨
雨がシトシト水曜日。ここは高知市鷹匠町。もちろん、山内家の鷹匠が住んでたから鷹匠町な訳やけど、今は大きなお屋敷が並ぶ、閑静な住宅街。その一角にあるのが、ご存知、県知事公邸。鉄筋コンクリート平屋建てで、1963年に完成してます。僕が2歳のときだから、もう、築60年を超えました。
首相官邸もそうやけど、知事公邸には、賓客をもてなしたり色んな団体と意見交換したり、という役割があります。「そんなもん要らんやないか」と言う人も居るでしょうが、 僕は、ある一定の大切な機能があるんだと思ってます。
この公邸を一躍有名にしたのは、1997年(平成9年)に、右翼の街宣車が突入した事件でしょうか。全国的にも改革派知事として名を馳せていた橋本大二郎知事の時代ね。もう、28年も前の事件になるのか。今、ネットで検索してもあんまし出て来ない「知事公邸街宣車突入事件」。ですが、あの頃は話題になったもんでした。
その知事公邸、築60年を超えたということで、「存廃を含めた議論」が始まっています。もちろん今の時代、同じような機能を持った大きな公邸を建てる、というのは現実的ではありません。さて、どうしたものか。
というところで、今朝の高知新聞にこんな記事が。「文化遺産としての高知県知事公邸」という講演が、京都工芸繊維大学の笠原准教授によって行われた、という記事。近代日本を代表する建築家のひとり、村野藤吾が設計した「唯一の公邸で、現存する数少ない和風建築の一つ。希少性が極めて高い」という内容の講演が行われた、という記事。
そう。先日、広島で見て来ました。国指定重要文化財「世界平和記念聖堂」。誰でも自由に入れる聖堂は、実に荘厳。原爆犠牲者を弔い、世界平和を祈念する場として企図、建設された聖堂。村野藤吾さんの代表作のひとつ、と言われているとのこと。
笠原先生によりますれば、村野建築の特徴は「西洋の歴史的様式とモダニズム、伝統的な和風様式を自由に操り、融合させる独自の建築」だそうで、この知事公邸は、村野らしさが凝縮された「作家性が強い」作品で「壊すなんてとんでもない」建築である、と語っておられます。なるほど。
もちろん、今後、維持管理の費用などの問題を考えていかんといかんけど、うまく活用したいねー。貴重な貴重な藤野建築の粋、希少な希少な藤野和風建築、高知県知事公邸は、雨の中、右翼の街宣車が突入することもなく、静かにたたずんでおりました。