火山噴火とゴルフ場とノーベル賞〔7471〕2023/09/29
2023年9月29日(金) 薄曇りずら
伊豆というところは、高知県人にはなかなか馴染みが薄い場所。そもそも行く機会が、ない。結構あちこち行っている僕でも、あんまし、来たことない。
大学生の頃、ゼミの連中と来たのが最初だと思う。あの時は、友人の車だった。車だったので、旧天城トンネルとか行った記憶があります。その次に来たのは社会人になって間もない頃。全国の中小乳業の任意の集まりでした。泊まったのは確か修善寺。農水省の乳業班長とかと、当時の中小乳業を代表するような経営者さんの話を、遠い世界のように聴いていたのを覚えてます。その時ご一緒した、当時若手の乳業後継者Hさんが、今は堂々たる全国乳業協同組合会長ですきんね。時は流れた。
その後、乳業連合会の研修懇談会を熱海でやったことも、ありましたねー。高知県で先進的に食育に取り組む南国市の教育長さんを講師に招き、農水省の役人さんも交えて有意義な時間を過ごしたことでした。
以上。たぶん、僕の人生で伊豆に来たのは、以上だと思います。なので今回は恐らく4回目の、伊豆。高知のお客様の視察研修で、昨日から横浜界隈などあちこちまわって来たのでした。で、泊まったのは有名な伊東の川奈ホテル。なんか知らんけど、大倉財閥の別荘としてつくられ、名門ゴルフ場として有名なんだそう。僕はゴルフをしないのでわからんけど、それはそれは名門の、由緒あるゴルフ場なんだそうですね。
そのゴルフ場で40年以上前に採取した土が、世の中を変えたのをご存知でしょうか。僕は、知りませんでした。
北里大学特別栄誉教授の大村智先生は、川奈ゴルフ場の土壌から発見された微生物、新種の放線菌から「エバーメクチン」という化合物を生成、2015年、ノーベル医学・生理学賞を受賞したのでした。「エバーメクチン」は、細菌や真菌には抗菌活性を示さず、寄生虫やダニ、ハエなどの節足動物に殺虫作用を示す化合物。哺乳類には害を及ばさない。そこで、動物用の抗寄生虫薬となる「イベルメクチン」が開発される。日本の犬のフィラリア予防と駆除に使用された結果、なんと、犬の寿命が2倍に伸びた、と、ウィキに書いてます。そして「イベルメクチン」の快進撃は止まらない。ヒトの「オンコセルカ症」にも極めて有効であることがわかったんだそう。日本人にはあまり馴染みない「オンコセルカ症」やけど、河川盲目症とも呼ばれてて、アフリカや中南米で年間3千万人近くが感染し、115万人が失明していたそう。それが、現在では激減して撲滅に近い状況になっています。「イベルメクチン」のお蔭で。その他にも、ヒトのリンパ系フィラリア症とか、多くの寄生虫による感染症に絶大な効果を発揮しているんだそう。すごい。ノーベル賞もらう筈だ。
そのきっかけとなった微生物が、このゴルフ場の土壌から発見された訳ですね。今から40年以上前のこと。
実はこの界隈の土壌、1万5000年ほど前の、小室山の噴火によってできてます。伊豆に多く存在する火山のひとつ、小室山は美しいお椀を伏せたようなスコリア丘。比較的小規模のストロンボリ式噴火で噴き上げられたマグマなどが地面に降り注いでできた丘。なので、きれいなきれいな円錐状火山。
川奈ホテルもゴルフ場も、その溶岩の流れによってできた土地の上に、つくられたのでした。溶岩の流れによってできた、緩やかにして起伏に富んだ地形が、ゴルフ場に適してたんでしょうねー。
1万5千年前に小室山が噴火しなければそんな土地はできず、ゴルフ場ができることもなかった訳で、そのゴルフ場で土壌が採取される筈もなく、未だに多くの人類や哺乳類が「オンコセルカ症」や「フィラリア症」などで苦しんでいたのでしょうか。
地球の、不思議。世の中、知らないことだらけ。