ひまわり文庫2021年6月の新刊〔6621〕2021/06/01
2021年6月1日(火)晴れ!
晴れて嬉しい梅雨の朝。
そんな訳で、はやくも6月になってしまいました。もう6月。コロナはどこへ向かうのだろう。コロナ退散コロナ退散。
そんな訳でひまわり文庫、2021年6月の新刊。もう、6月か。
まずは、我らが西澤保彦さんから。言わずと知れた「新本格」ミステリのベテランで、高知市在住。以前、故坂東眞砂子さんとかと一緒に飲んだりしたことのある西澤保彦さんの最新刊、こないだ出たばっかしの「あの日の恋をかなえるために僕は過去を旅する」は、以前の西澤さんの作風に近いですね。
なので、最近の、軽いタッチのではない、昔の西澤作品を久々に読みたくなってしまった。そこで買って再読したのが、「殺意の集う夜」。昔、飲み会の時、この作品のことを西澤さんに言うと、「ちょっとふざけすぎてしまいました」みたいなことをおっしゃってたのを思い出します。なかなか面白い西澤ワールドを、発刊時の講談社ノベルス版を手に入れて読んでみました。いやー、すさまじい展開。楽しい楽しい。
最近お気に入りは太田愛。TSUTAYA中々店で山中さんがおすすめしてて、まだ読んでなかった「天上の葦」上下巻、一気読み。さすがの太田愛。大好きな作家さんになりました。今回は、ラストも痛快丸齧りでいい読後感でした。次回作にも期待したい。
と、今月は小説、こんだけ。これだけ。他は結構重たいジャンルの本の数々。分厚いハードカバーも多いねー。コロナ下のGWもあったりして、内容の濃いのをじっくり読めました。
では参りましょう。新書3冊。まずは中公新書で「オスマン帝国」。一時は世界帝国として栄えたイスラムの大国、オスマン帝国の歴史。なぜ、600年もの長きにわたってオスマン帝国は存在し得たのか。そして栄えたのか。現在のエルドアン大統領は、オスマン帝国の夢を追いかけてるとすれば、それはどういうことなのか。
ちくま新書の「現代ロシアの軍事戦略」は、現代ロシアが、冷戦終結後に軍事力、経済力としてはアメリカに対抗する実力を失いながらも、独特の戦略と知恵によって存在感を発揮しようとしている姿を、専門家の小泉悠が解き明かす。すごいね、ロシアも。
そして集英社新書の「人新世の資本論」。これはもう、本屋さんにたくさん積んでるから読んだ方も多いと思う。2021新書大賞で第1位となった、新進気鋭の経済思想家、斉藤幸平の最新作。以前、「大洪水の前に」を読んだけど、それをもう一歩推し進めた理論。現実的かどうかは意見がわかれると思うけど、なかなか斬新な新しい時代の経済理論。現在の資本主義社会は、間違いなく、どうやっても、例えSDGsに取り組もうが、地球環境を破壊して人類を破滅に向かわせる。だから、最新のマルクス研究の成果をもとに、新しい社会のあり方を提言する。そういう本。そういう本が新書大賞、ということは、この世界もまだ捨てたもんではないかな?と思わせてくれます。衝撃的な本、ではあります。
ちょっと一息。「白球黄金時代」。高知県土佐市宇佐。その小さな町は、プロ野球選手を6人も輩出しています。なぜか。この本の主人公は、宇佐で生まれ育ち、西鉄、巨人で活躍しロッテでコーチをつとめた浜村さんと、その幼馴染の門田さん。お二人とも、今は宇佐で暮らしておられます。高知の野球事情からプロ野球の裏話など、僕ら世代にとっては面白い話だらけ。僕を甲子園のスタンドへ連れて行ってくれた籠尾監督の話もいっぱいでてきます。書き手は、元高知新聞社会部長で、現在朝日新聞の依光さん。故坂東眞砂子さんの飲み会で時々ご一緒した依光さんの、さすがの文章で、面白い本に仕上がってます。高知県人必読。
「神道の中世」は、金高堂さんをプラプラしてて書いました。僕らが知っている神道は、江戸時代以降の、天皇家と結びついた神道。しかしその源流は中世にあり、神仏習合から分離してきた神道であったりします。近世になって、仏教との結びつきや独善性から批判の対象になった中世の神道は、一般にはほんとうに馴染みがない。しかし。現代の神道の源流に、中世の思想があるのは間違いなく、明治以降の偏った国家神道とかを考えるに際しても、重要な示唆を与えてくれるのであります。僕の好みっちゃあ、好みの世界。
僕が大好きな教養人で、一緒に飲んだことがあるのが自慢の出口治明さん。その「教養としての地政学入門」は、出口史学のど真ん中。世界史の動きが、その地政学的要因で語られ、とっても勉強になります。教養って、大事やね。政治家さんたち、もっと教養を深めようよ。
「土偶を読む」は、こないだ、興奮して紹介しました。縄文時代の遺跡から出土する土偶は、いったい「ナニ」なのか。考古学者ではない、人類学者の著者が、本人も思いもよらなかった重大な発見をしてしまう。詳細、細部はまだ煮詰めて検証していかんこともあるだろうけども、この本で書かれている着眼点は、たぶん当たってます。正解。基本的なところで、謎は解けたと思います。すごい発見やと思います。この説が認められ、学会での主流となり、教科書が書き換えられるまでの推移を、社会学的に注視したいね。とにかく目から鱗なので、読んで欲しい「土偶を読む」。分厚いけど読みやすいので、僕は1日で読みました。
最後。これもすごい。「家は生態系」。新聞の書評欄で見て、書いました。僕らは、家の中で、少なくとも20万種類の生物とともに、暮らしている。そして、その家の中の生態系が多様であればあるほど、僕らは安全に暮らしていけるのだ、という衝撃的な内容。殺虫剤とかを無闇に使うと、その多様性が失われて、生活や僕らの健康に重大な影響を与えてしまう。ビックリする話ね。
あと、カマドウマの腸内細菌から、プラスチックなどを分解してしまう化学物質を抽出することに取り組んだりして、なかなかこの著者、頑張ってます。
衝撃的なのはゴキブリの話。かつて、ゴキブリが好む糖類でゴキブリを誘き寄せ、殺すというのは当たり前だった。ところが。最近の研究で、その誘き寄せに使っていた糖類を忌避するゴキブリが優勢になっており、効果がなくなっている、という話。進化だ。で、人間にとって有用な生物が殺虫剤によって死滅し、進化したゴキブリがどんどんと勢力を増しているという、ホラーのような話が、現実になっているんだそう。大事なのは、多様な生態系。ある種の虫を殺してしまおうとすると生態系が縮小し、却って僕ら人類にとって危険な状態になる、という話なんですね。これ、ぜひ、読んでみてほしい。この本も分厚いけど、結構一気に読めますきに。
そんな訳で今月の新刊。魅力的な本が多すぎてイチオシ迷うねー。ベスト3は「土偶を読む」「家は生態系」「人新世の資本論」でしょうか。その中でも今月のイチオシはこれ。「家は生態系」に決めました。衝撃的ですよ、これ。皆さんにおすすめ。
さあ、6月が始まってしまいました。今月も張り切って仕事仕事!