ひまわり文庫2021年4月の新刊〔6560〕2021/04/01
2021年4月1日(木)
4月。早いねー。4月。新入社員さんも入ってくる、4月1日。コロナはコロナやけど、季節はどんどん巡ってゆく。
そんな訳で、ひまわり文庫2021年4月の新刊。
まずは我らが西澤保彦さんの「さよならは明日の約束」。近年西澤さんの、ライトなタッチの本格ミステリね。西澤さんは高知在住のミステリ作家で、僕も、故坂東眞砂子さんたちと一緒に飲んだこともあるという自慢話、幾度も書いてきました。「さよならは明日の約束」は、TSUTAYA中万々店さんで、目を引くPOPとともに並べられてて、まだ読んでなかったことを思い出して書いました。
爽快な読み心地。で、読み終えてビックリした話は、こないだ書きました。すごいよ、山中さん。
当然、一緒に並べられてた同じシリーズの「夢の迷い路」も読んどかんといけません。期待に背かない佳作「夢の迷い路」。その「あとがき」を読んでて驚きました。西澤さん、2017年に過度の飲酒が原因で入院した、とご本人が書いてます。で、入退院を繰り返しつつ完成させたのが、この本らしい。今も無事、断酒している、と書いてますね。一緒に飲めんのは寂しいけど、また、色々語り合いたいです。できれば山中さんも一緒にね。
同じく西澤保彦さんの「夢魔の牢獄」も、TSUTAYA中万々店さんで。これが西澤さんの最新刊でしょうかね。最後の最後の展開など、若き日の西澤作品を彷彿させるものがあって、面白かった。最近のライトなのとは、また違う作品。西澤さんの本領って、本当はこっちなのかも、知れません。
こないだ「おまけ本箱」というのをうっかり買ったこと、書きました。同じくTSUTAYA中万々店さんで。その本箱に入ってたのが「サーカスの夜に」。不思議な雰囲気の小説。僕なら、本屋さんに並んでても手に取ることはないようなジャンルですが、こういう機会だから読めました。いや、面白かったです。こういうのも、たまには、良い。
中段にきて「国銅」。箒木蓬生さんが、奈良の大仏鋳造を背景にして描いた、その時代の庶民。上下巻、一気に読めます。こういう時代を、庶民の視点で描いたものって少ないので、新鮮でした。
今月の小説は、これくらい。半分が小説ってのも、TSUTAYA中万々店の山中さんの影響やねー。
「慵斎叢話」。ようさいそうわ。これを手に取ったのもTSUTAYA中万々店さん。店内の一角に、「一冊も買ってもらえなかった本」というのを並べて、紹介してるコーナーがありました。確かにマニアな本でサモアリナン、という本も多かったけど、これは興味深かったので、買ってしまった。いわゆる「思う壺」というやつだ。15世紀朝鮮の奇人変人が繰り広げる奇譚、笑い話などなどが纏まってます。いろいろ言う前に、いろいろ知ろう。
こないだ、古代官道のこと、書きました。士島田遺跡の直線道路。律令時代の道路が広くて直線で中央政府に直結してた、という話。「古代道路の謎」は、その古代の道路について、なぜ直線で広かったのか、なぜ廃れていったのか、などなどを専門家の目で解説してくれてます。ご想像のとおり、僕のツボ。なんとなく感じてたことが、理論的に合理的に、頭の中で整理できました。ありがとうございます!
「くそじじいとくそばばあの日本史」は、書名命名の勝利やね。確かに、日本の歴史で重要な働きをした高齢者は、多い。それを面白おかしく、書いてます。著者の大塚ひかりさんは、同時代に同じ大学にいた(学部は違う)らしいので、視点や感性が似てるのかも知れません。
そして、「生命とは何か」。
すごい題名。もちろん、シュレディンガーの同名書籍へのオマージュ。ノーベル賞受賞の生物学者、ポール・ナースが、生命探求の人類の歴史から紐解いて、生命の本質を解説し、そして未来について語る。3月に出版されたばかりの本で、出版前から予約して、書いました。わかりやすい。これ、帯で養老孟司さんが言うてるように、教科書に使えますな。テーマがテーマだけに時間かかるかと思いきや、一気に読めた、「WHAT IS LIFE」。
読むのに意外と時間がかかったのが「地球に月が2つあったころ」。惑星科学の著名な研究者である著者が、太陽系の惑星や衛星、小惑星、彗星などについて、その成り立ちや組成、生命の誕生や生命存在の可能性など幅広く考察してます。広い。深い。難しい。ので、今月の新刊の中でも飛び抜けて読むのに時間かかりました。この本だけで、一週間くらいかかってしまった。
最後まで挫けんかったのは、その最後の方に、この「月が2つあった」という魅力的な仮説が紹介されてたから。月の組成の謎が、その仮説によってキレイに説明できるのだ。まだ太陽系ができたばかりの頃。月は、地球のすぐそこにあり、しかも2つあった。見てみたいねー。そんな空。
最後。「後藤新平 日本の羅針盤となった男」。
後藤新平は、明治大正の日本を語る上で外すことのできない、最重要人物の一人だと思ってます。関東大震災の復興計画で有名やけど、そもそもはお医者さん。保健衛生の立場から都市計画を立案し、公衆衛生の考え方を日本に根付かせた人物でも、あります。もちろん結果的に間違ったこともあったけど、その考え方の根本にあったのは、日本の将来。どんな国にしたいか、という強烈なビジョン。激動の社会に、こういう人物が存在したことは、僥倖だったと思う。
大切なのは、どんな国にしたいかという思想。そして具体的なプラン。そして行動力。すべてを兼ね備えた稀有な人物、後藤新平。あの時代に、天から下された人財だったのか。そして、今の政治家と見比べてみると、哀しくなるね。
今月のイチオシは、これ。「後藤新平 日本の羅針盤となった男」。某S君にも、他の政治家たちにも読んでもらいたい。