ひまわり文庫2021年2月の新刊〔6501〕2021/02/01
2021年2月1日(月)薄曇り
今日から2月。もう2月。はや2月。ああ・・・
仕方ないのでひまわり文庫2月の新刊。最近、TSUTAYA中万々店のお陰なのか何なのか、ひまわり文庫にしては珍しく小説が多くなってますなー。まあいいか。
まずは上の左端。「この本を盗む者は」。これもTSUTAYA中万々店様で、面白げにPOPが立てられてた本。読書愛好家の家に生まれたが為に読書を拒否して生きてきた主人公が、読書の素晴らしさに気付いていくファンタジー。若者向けでしたね。弊社にも、本を読まない若い社員、Sさんが居るけど、なんとか本の良さを伝えようとして、先月ご紹介した「赤ずきん旅の途中で死体と出会う」を読んで貰い始めました。果たして読破できるのか。本を読むようになるのか。乞うご期待!
上段右は「襲来」。箒木蓬生さんという異色の経歴を持つ作家さんが、室町時代の蒙古襲来を、日蓮に焦点を当てて描いた時代小説。高校の同級生で、「日本人のおなまえっ!」で解説してる森岡君が推薦してたので、読んだ本。展開は、僕好みではなかったけど、とても勉強になりました。
その隣「その裁きは死」。英国の作家、アンソニー・ホロヴィッツの手によるベストセラーね。こないだ読んだ「メインテーマは殺人」の続編。いかにも英国らしい小説ね。ホームズをリスペクトしてる感満載。ちょっと鼻につくくらい。でもまあ、面白かったっす。一気読みできるミステリ。
今回の小説で一番面白かったのは、これ。「たかが殺人じゃないか」。これ書いた辻真先さんは、1932年生まれ。テレビの脚本家として名を馳せる人物やけど、ミステリも書いてます。書いてるどころではなくて、この作品で、2019年に日本ミステリー文学大賞を受賞してます。87歳での最年長受賞。昭和24年の日本が舞台なので、リアリティは、この作家さんならでは。トリックとかは古典的やったけど、全体の構成、雰囲気がいいね。面白かったです。
中段。右端は「日本人の自伝」。我らが馬場辰猪さんや植木枝盛さんの自伝が載ってる本。こないだ、故坂東眞砂子さんのエッセイ文を読んでて、こんな日記があること知りました。馬場さんも植木さんも、強烈な思い、矜持、そして自負を持った人物だったこと、わかります。自分の思いや行動に対する自信。すごい。軽蔑する相手はケチョンケチョンのコッパミジンですきんね。土佐の自由民権運動を牽引した人物って、やはりものすごい個性を持ってたこと、改めて実感できました。すごい。
「サンソン回想録」は、かの文豪バルザックが、死刑執行人として有名なシャルル・アンリ・サンソンの自伝の体で書いた本。創作の部分も多いけど、フランスの、当時の雰囲気がよくわかります。サンソンは、死刑執行人の家系に生まれ、マリー・アントワネットやルイ16世、ロベスピエールなどの死刑を執行した人物として有名。マンガにもなってるみたいね。この本には、そんな有名な場面は出てきません。死刑執行人の家系に生まれるとはどういうことか。差別の中で生まれ育ち、生きていくサンソンの「自伝風」小説。
その左は僕の趣味。まずは「妙な線路大研究」。東京の鉄道の、不思議なルートや形状などを紹介し、その理由をつきつめていくマニアな一冊。なぜ田端と池袋の間はM字なのか、といった僕の知ってる話題から、高田馬場の北で西武新宿線が急カーブしている理由などの知らんかった話題まで、なかなか面白くまとめてますな。地形と鉄道、社会と鉄道、世の中と鉄道。僕と鉄道。全部、緊密な関係でつながっている。
その左は「東京の巨大地下網101の謎」。先月の新刊で「地下をめぐる冒険」読みました。世界中の、隠された地下の遺構を探検する人たちの話。興味津々。なので、こんな本みつけたので書ったのでした。東京の地下を巡る都市伝説みたいな話をいっぱい期待してたけど、割合に現実的な地下空間の話でした。誰か、幻の地下鉄線路とか、探検してくれんでしょうかね。
下段。「古代メソポタミア全史」。去年11月の新刊でご紹介した「シュメル」を書いた小林登志子先生が、今回は紀元前5500年からササーン朝ペルシャが登場するまでのメソポタミア史を、素人にもわかるようにキチンと整理整頓して教えてくれる本。これ一冊で、メソポタミアのこと、かなりわかる。佳い本です。頭の中、整理できました。
整理と言えば、最後にご紹介するのは「福岡伸一、西田哲学を読む」だ。これは面白かった。福岡伸一先生は「動的平衡」で有名。生命のありようは、常に変化していく平衡状態である、という考え方。「動的平衡」も「動的平衡2」も「動的平衡3」も面白かったし、フェルメールに対する造詣の深さや、文章の巧さで、非常に尊敬できる福岡ハカセ。勉強会の記念講演に招いたこともあって、その際に一緒に飲んだのが、自慢。その福岡先生の「動的平衡」の考え方が、あの難解で有名な西田幾多郎先生の西田哲学と通じるところがある、ということで、西田哲学研究の第一人者である池田善昭先生と、時間をかけた徹底的な対談を行ったのが、この本。難解な西田哲学が、身近になった気がしました。今の時代に西田哲学って、必要なのかも知れない。
「包み包まれる」という西田の表現は、「生命は合成を行うと同時に分解を行う」「生命はエントロピー増大に中にありつつ、エントロピー減少につとめる」と同じ意味である、と、福岡先生が理解していく過程が読み取れて、勉強になりました。一読の価値、あり。
と、書いてきたことでわかったと思うけど、今月のイチ押しは、これ。「福岡伸一、西田哲学を読む」でした。迷わず、「福岡伸一、西田哲学を読む」。
そんなこんなでもう2月。コロナの出口が見えてきたようなきてないような、2月。
頑張って、今を生きていこう。今週が、今月が始まります。