100年前の100年後〔6428〕2020/11/20
2020年11月20日(金)小雨
昨夜は、ちょいと故あって、美術館ホール。高知県立美術館の自主企画で、「フリッツ・ラングvsエルンスト・ビッチ」という映画と音楽のコラボレーションを観に行ってました。
この二人は、1890年代に生まれてドイツで活動したユダヤ人映画監督。後にアメリカに亡命して活躍する訳やけど、今回は、その二人が1920年代につくった無声映画の上映。
無声映画というと、昔は、楽士が居て、生で音楽を付けながら鑑賞するものだった訳で、今回の企画は、日本を代表する素晴らしいミュージシャンたちに「楽士」になってもらい、生で映像を観ながら演奏してもらうというもの。どんなになるのか、想像もできんかった。
「楽士」を務めてくれたのは武田理沙さん、勝井祐司さん、大友良英さん、そして我らが坂田明さん。すごい。すごいメンバー。
結論。
素晴らしかったっす。いやー、良かった。二本立てで、最初はルビッチ監督の「山猫リュシカ」81分の作品。そして二本目がラング監督の名作「メトロポリス」。内容はウィキにもあるので見て欲しいけど(ネタバレ注意)、100年近く前に、100年後の未来都市を描いた作品。
最近オーウェルのディストピア小説「1984年」が注目されたりしてるけど、この映画も、機械文明が発達した危険な世界を描いてます。
この作品はなんと148分。長い。本当はもっと長かったのが、オリジナルフィルムが紛失してしまい、後に発見されたフィルムなどをつないで復元したのが、今回のもの。でも息をつかせぬ展開で、長さを感じさせません。
後半はすごいスペクタクル。CGが無い時代に、あんな映像を撮るのは、すごい。制作にはとんでもないお金と人が必要だったでしょうねー。お陰で100年後の僕らは、楽しむことができる訳だ。
そして音楽。いやー、良かった。それぞれの音楽家が個性を発揮したインプロヴィゼイション。こういう企画、誰が考え出したんでしょうかね。坂田明さんのCD付き書籍「私説ミジンコ大全」を買って、サインもらってしまいました。
それにしても「メトロポリス」。
暴動のシーンは、宮崎駿さんの「未来少年コナン」にも影響与えてますね。これ。
100年前に想像した100年後の世界は、蒸気や電気で動く機械の世界。人間の想像力の限界。テレビ電話みたいなのが出てくるのはすごいけど。
コンピュータもキーボードも登場しない2020年代。
つまり。
今、僕らが100年後の世界を想像して映画作っても、100年後の人たちにしてみたら「これが想像力の限界やね」と思うものしか作れない、ということっすね。そんなことも考えさせられた、良い時間でした。