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今日のにっこりひまわり 毎日健康社員日記

森下雨村の仁淀川〔6267〕2020/06/12

森下雨村の仁淀川

2020年6月12日(金)曇り

梅雨空の下、今日は久々に県外へ。国道33号を、愛媛県方面へ向かっております。こうやって少しづつちょびっとづつ、平常な生活へと戻っていくしかありません。もちろん細心の注意を払いながら、ね。今晩はまたzoom飲みの宴会があるので、はよう高知にモンて来んといけません。

 

途中、佐川町を通りました。佐川町ってのは、本当に多くの偉人を輩出してます。特に、学者や文化人。佐川町のホームページ見ると、わざわざ「文教人」という項目が立ってるくらいですきんね。文教の町、佐川。多くの「文教人」を輩出した基底に、佐川の殿様、深尾家の教育に対する理解があったことは言うまでもないでしょう。佐川の「名教館」は、宿毛の「日新館」と並んで、偉人輩出装置でありました。あ、田野の「田野学館」もね。

 

で、森下雨村。こないだ、高知新聞に「猿猴 川に死す」のことが載ってて、このにっこりひまわりでも紹介したけど、佐川町出身の森下雨村は、日本の推理小説の、父。高知一中から早稲田の英文科を出て、新聞記者を経て博文館に入社。そこで、かの「新青年」の創刊に携わったのは、大正9年のこと。その新しい雑誌でなにをするか、は、森下君に任されていました。そこで若き森下君は、その雑誌上で海外探偵小説を積極的に翻訳紹介しつつ、日本人探偵小説家の登場を待ったのでした。

そして現れたのが、江戸川乱歩。大正11年のこと。

「新青年」に送られてきた、無名の作家が書いた「二銭銅貨」という探偵小説。これを一目見た森下雨村は、驚嘆、絶句したと言います。これは本当に日本人が書いたのか?まだ、日本にこれだけの探偵小説が生まれる筈がない!というのが正直な感想だったと言います。それが、日本の本格ミステリの出発点となったのでありました。

爾来、久生十蘭や横溝正史などの多くの作家を生み出した「新青年」と森下雨村。

 

その森下雨村が、まだ50歳の働き盛りに突然郷里、佐川へと帰り、釣りをしたり随筆書いたりという自適生活を始めたのは、何故か。

これには色んな説が、あります。

元々考えてた「ハッピーリタイアメント」だったのではないか説。「半農半漁」のアウトドアー・ライフは、彼の人生設計上の「予定」の行動であり「定年帰農、ハッピー・リタイアメント」だった、という説で、それはそれで魅力的。

でも、どうやらそれだけではないのではないか、という説も、有力。それは、帰郷したのが昭和15年という時期で、書きたいことが書けない世相、社会情勢に反発してのことであったのではないか、という説も、有力。

 

真相は、もう天国へ行ってしまった森下さんにしか、わからない。

帰郷してから書いた釣り随筆「猿猴 川に死す」は、日本のつり随筆の嚆矢にして傑作。こないだ新聞で見かけてから今一度読み返してみたけど、面白い。極めて面白い。森下さんの時代の川の風景って、なんと素敵なんだろう。

これ読んでると、理由はどうあれ、50歳以降を佐川で暮らしたのは正解だったのではないか、と思えますよね。思えます。

 

猿猴 川に死す」の最初に出てくる横畠義喜のエピソード。雨村の遠戚で「昵懇という以上に遠慮のない仲」であったという横畠さんは、川とともに生きていた、まさに猿猴と呼ぶにふさわしい人物だったそう。その猿猴が、溺れた子供を助けようと川へ飛び込み、運悪く水中の岩角に頭をぶつけ、それっきりになってしまいました。

その猿猴は、雨村の生まれた佐川の隣村K村、とあるので、加茂でしょうか、日下でしょうか、黒岩でしょうか。子供の頃から「仁淀川の淵瀬をもぐり荒らす河童の大将」だった、義喜さん。

「見るからに人間の中の川獺といった感じがして国境の落出付近から下流黒瀬のあたりまで、えんえん二十余里の仁淀の流れで、彼の一党が金突きを入れなかった淵や浅瀬はどこにもなかったであろう。」

 

「猿猴」義喜が「もぐり荒らし」た仁淀川。写真は、引地橋から眺めた仁淀川。ここも、「もぐり荒らした」でしょうね。緑濃い、仁淀川。この美しい風景を眺めながら、今日は、コロナ後に向けての新しい一歩を踏み出します。


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