陛下と大辞林〔6044〕2019/11/02
2019年11月2日(土)晴れ!
こないだ「陛下」のこと、書きました。
明治22年の皇室典範で、天皇だけだった敬称の「陛下」が、三后にまで拡大された、て話。三后とは、皇后、皇太后、太皇太后。天皇陛下の奥さん、前天皇陛下の奥さん、そして前々天皇陛下の奥さんという訳だ。その先代が想定されてないのは、まあ、それほど長生きすることは想定せんでもね、ということなんでしょうな。
明治以降、天皇陛下は終身天皇陛下である、との想定だったから、御存命の「前天皇」というのはそもそも存在しなかった訳で、世の中には想定外が溢れてる、という話。
今回想定外だった生前退位が行われ、上皇陛下と上皇后陛下が誕生したのは、みなさんご承知の通り。だから、「陛下」が使用されるのは、天皇陛下、皇后陛下、皇太后陛下、太皇太后陛下、それに上皇陛下に上皇后陛下となった訳ですね。
前回そのことに触れたとき、今年9月5日発行の大辞林第四版の「陛下」の項目には、きっと「上皇」と「上皇后」が追加されてるんだろうね、と書いたのでした。
さて。
実は、確認してみたのであります。新しい大辞林第四版。オーテピアで。
なんと、「陛下」の記載は第三版のままでした。
「天皇・皇后・皇太后・太皇太后の敬称。単独で用いるときは天皇を表すことが多い。」のままだ。
改版が間に合わなかったのか、気付かなかったのか。これは重要な部分なので、現在の「上皇」「上皇后」がちゃんと説明されてるのかどうか、調べてみた。
ある。あります。ありました。
上皇
1.天皇が譲位後に受ける尊称。太上天皇。太上皇。
2.天皇の退位等に関する皇室典範特例法により退位した天皇の称号。2019年、平成の天皇が明治以降初めて生前に退位し、この称号を受けた。
上皇后
上皇2.の后の称号。
といった風に、今回の特措法による上皇、上皇后について、たぶん慌てて追加記載されたものと、思われます。
と、いうことは、「陛下」の項目に「上皇」「上皇后」がない、というのは、改訂にあたって、気付かんかった、ということなのか。なるほど。
陛下、殿下は、今も使うけど、滅多に使わんなったのが、閣下。かっか。
大辞林でも、大言海でも、高位高官、身分の高い人につかう尊称で、軍人だと将官以上に使われる、とあります。現代は、外交において、外国の閣僚とかに使うことがあるくらいか。
大辞林にも大言海にも書いてないけど、閣下閣下と呼び合って喜んでたのは、どうやら陸軍だけらしくて、海軍ではほとんど使われてなかったらしい、と、ウィキに書いてます。
無謀なインパール作戦を考えて実行させ、夥しい兵士を死なせて評判がすこぶる悪い将官は、戦後、部下だった人たちが集まったときにも「閣下」「閣下」と呼ばせてエツにいってたという話があります。閣下と品性は関係ない、ということが、よくわかるね。
それはともかく、この大辞林第四版の編集長は、こないだも書いたけど、高校の後輩だ。頑張ってもらいたい。まあ、想定外のことがおきると、対応も想定外になりますきんね。
今日みたいなことを書くのは、いわゆる、揚げ足取りというヤツね。
揚げ足を取・る
人の言葉じりやちょっとした失敗を取り上げて、相手を責める。