東京婦人〔6022〕2019/10/11
2019年10月11日(金)晴れ
はばかり。
昨日のにっこりに、ままかりは今も昔も岡山名物で、はばかりは今も昔もトイレのこと、などと書きました。ほんとうに、そうなのか。
そこで調べてみた「大言海」。大槻先生は、「はばかり」についてどういう見解なのか。
はばかり
(一)ハバカルコト。畏レ慎ムコト。
(二)東京婦人ノ語ニ、人目ヲ憚る意ヨリ、厠、又ハ、厠ニ上ルコトノ隠語。
東京婦人ときたもんだ。江戸時代の弘化年間に生まれ、明治期に活躍した大槻先生にとって「東京」は、文明開化の新しい都だったのか。その文明開化の世の中の最先端をいく新時代の婦人が、厠、便所というのを憚って、「はばかり」と言い始めたのかも知れない。そうすると、はばかりは、「今も昔も」ではなくて、近代になってからトイレの意味を持つようになった、ということなのか。
真相は、わからない。
マニアなマニアな「大言海」ではなくて、ポピュラー代表の「大辞林」を見てみよう。三省堂ね。
これはまた、なかなか詳しい。
はばかり
1.はばかること。つつしみ、さしひかえること。遠慮。
2.さしさわりのあること。差し支え。支障。
3.便所。
4.「はばかりさま」の略。
実際は用例とか、もっと詳しく書いてるけど、こんな感じ。シンプルに「便所」だ。ここには東京婦人は登場しない。大辞林の初版が出たのは1988年と、極めて最近のこと。だから、すでに「はばかり」は老若男女、貴賎を問わず、トイレの意味で使うようになっていた訳だね。
でも、大槻先生の時代は、一般庶民は「厠」「便所」を使い、東京婦人だけが「はばかり」を使っていた。ということなんだろうか。そうすると、昨日のにっこりで登場したYさんは、純然たる高知婦人なので、「はばかり」を「ままかり」と間違うのも無理はない、ということなんだろうか。
で、便所って、今もいろんな呼び方されます。
トイレと呼ぶのが一番多いと思うけど、第二位はお手洗いかも知れません。化粧室というのもあるね。こういった言葉は、どうやら昭和になってから使われ始めたらしい。その証拠に、「大言海」に、便所の意味の「お手洗い」「手洗い」は載ってない。いわんや、化粧室をや、だ。
厠はまだしも、便所という語感がストレート過ぎていかんかったんでしょうな。
今、使わんなった言葉に、雪隠があります。これは中国からやってきた言葉で、由来は、雪隠寺というお寺さんで、トイレ掃除が好きなお坊さんが居た、とか、トイレで悟りを開いた、とか、いろんな説があるんだそう。もう、雪隠という言葉を使う人は、なかなかおらんけど、トイレで悟りを開くというのも、なかなかやね。
WC。
これも最近、使わんねー。Water Closet。高校の同級生で、学生時代に一緒に台湾を自転車で回ったM君。彼には年の離れた面白い弟がおりまして、その弟に「WCは何のことかわかるか?」と尋ねたら「うん○と○っこの略称よ」と即答したという逸話を、今、思い出しました。
どうでも良いですか?