ひまわり文庫、2018年9月の新刊〔5619〕2018/09/03
2018年9月3日(月)爽やか!
台風が近づいているのが嘘のように、本当に爽やかな朝。生い茂る夏草の上には、どこまでも青い空。
そんな訳でひまわり文庫9月の新刊。新しい図書館ができたので、文庫補充ペースはこれから少し落ちてくるかも知れませんね。まあ、今月はいつもくらいの10冊。ちと、趣向を変えてこんな並べ方にしてみました。
まずは右上。「波止場浪漫」上下巻。この、諸田玲子さんという作家さんの本は初めてなんですが、縁あって、読むことになりました。この本の解説を書いてらっしゃる植木豊さんは、土佐史談会関東支部のメンバー。と申しましても、ご本人は高知に住んだことはない。でも、先祖代々、高知の須崎で活躍をされていた名家なんですね。その植木さんが「土佐史談」に論文を寄稿するに際し、僕のにっこりの写真をお使い頂くことになったのが、ご縁のはじまり。先日、墓参などを兼ねて帰高されたときにお会いできました。その時頂戴したのが、この本。なんと。植木さんの曽祖父にあたられるお医者さんが出て来る。しかも、準主役。清水次郎長の娘と、植木さんの曽祖父の、叶わぬ恋の物語。こういったロマンス物は、あまり読む機会がないけども、話は実話に基づいていて次郎長などの有名人が登場し、なかなか面白い読み物になってました。植木さん、ありがとうございます!
その下の二冊。伊坂幸太郎だ。ストレス解消に一気に読むなら伊坂幸太郎。「オーデュボンの祈り」は伊坂幸太郎のデビュー作。ああ。このシュールさは、なんだろう。とても不思議な物語。こんな小説でデビューする作家とはどんな人だろうか、と思わされる。「砂漠」は、学生時代の甘く切なくセピア色の物語。伊坂幸太郎が音楽とともに生きていることは、よくわかりました。
その左。「センセイの書斎」。この書き手の内澤旬子さんは、以前、高知の居酒屋でお会いしました。そして読んだのが「飼い喰い」。自分で豚を飼育し、それを食べるまでの話をレポートした佳本だった。その内澤さんが、色んな学者や文化人などの書斎を訪ね、どんな本がどんなに収納され、使われているのかをレポート。勉強になりました。
その左が「アースダイバー 東京の聖地」。中沢新一さんが、僕の大好きな築地を文化人類学的に分析、その、数値化できない魅力を、歴史とともに解説してくれてます。あと、明治神宮の森も。こういった施設、公園を作る「思想」のすごさ。都市計画は「思想」であるという僕の持論を論理的に裏付けてくれる嬉しい本でした。
「塗りつぶされた町」は、19世紀末期にロンドンに存在した超絶スラム「ニコル」のことを書いた本。当時のロンドン地図では黒く塗りつぶされていたという、町。為政者としては目をつぶりたかった。でも、存在した、スラム。そこでの生活と、そのスラムを食い物にして金を稼いでいた人たち。今、こういった本が出ることには意味があるんだと思いました。
さて。その上。「粘菌 偉大なる単細胞が人類を救う」。マイブーム、粘菌の本ね。この中垣俊之先生は、粘菌に迷路を解かせる研究と、粘菌に関東圏鉄道図を作らせるという研究で、二度もイグノーベル賞を受賞しているという先生。でも、本当に真面目に、かなり高度な研究してます。この本も少し難解な部分もありますが、粘菌という不思議な生き物の魅力を存分に語ってくれる。生きる、考える、とはいったいどういうことなのか。粘菌は、やはり、そんな深い深いことを考えさせてくれる不思議な生き物。
その隣の「粘菌生活のススメ」は、学者さんではないけど粘菌に魅せられた著者が、自分で撮影したたくさんの美しい粘菌の写真とともに、学者さんとの対話も交えて粘菌の魅力を語ってくれてます。とにかく粘菌の写真が、綺麗。
最後。「逆説の地政学」。
この著者の上久保誠人という人、面白い。今回の自民党総裁選挙について、実に面白い考察をしていたので、その著書も面白いだろうと思って書いました。予想通り、ツボ。
地球の国際情勢を、独特の地政学的視点で読み解く。特に、イギリスのEU離脱については、その独自の視点が面白い。英国というのは、やはりシーパワーの巨人として、これからとても重要な国であり続けるということ。頭の体操にもなりますな。たくさんの視点を持つこと、色んな角度から見ることの大切さよ。
といった9月の新刊。読む本の傾向が、また、偏ってきたぞ。