デザイン考〔4522〕2015/09/02
2015年9月2日(水)晴れ
やっと晴れました。雲は多めですけんど。やっぱし青空はエイですな〜。
ここは今朝、4時過ぎの堀川。右手が中の島で、左手が農人町。かつて、高知市の物流の玄関口として、夥しい舟が行き来した堀川。現在のかるぽーとの所に中央卸売市場があったので、往時の堀川の午前4時と言えば、結構賑やかやったと思われます。
正面の低い空にはシリウス。冬の大三角形を構成するシリウスが、早朝の夏空に光り輝く美しい風景。
この堤防、最近になって新しくなりました。東日本大震災を受けてのことでしょう。地震に強く、津波に強い堤防になったがやと思います。農人町の堤防。堤防の上が広くなって、道路を走る車を気にすることなく、ゆっくりとお花見できるようになりました。
左手に見える建物は、土佐倉庫。昭和2年に建てられたという、円い柱がモダンな、素敵な建物。昭和2年に建てられ、90年近くの間、現役で活躍しゆうというのもすごい。
昭和12年、土讃線開通記念南国土佐大博覧会の記録の映像に、この農人町界隈の映像がちょこっとだけ映っちょります。その映像に、堀川沿いに屹立する土佐倉庫さんが出て参ります。当時は、こんな堤防もなく、土佐倉庫は堀川に面して建っておった、そんなことのわかる映像。
90年近くの歴史を刻んできて、今も現役で活躍する倉庫。
しかし、ホント、大正から昭和の初め頃の建物には、お洒落なものが多いですな。明治の始めに西洋建築が入ってきて、それを咀嚼し、日本人の手で西洋風のお洒落な設計が為されるようになった、そんな時代。デザイン性を重視し、部材にもお金をかける。なんか、時代のゆとりと申しましょうか、気概と申しましょうか、そんなものを感じてしまう。
最近、オリンピックの競技場とかエンブレムとか、とかくデザインのことが話題になりよります。まあ、どうでもカマんような話ですが、情報社会、デジタル社会の中で、機能性とデザインに対する取り組みと申しますか気構えが、大正の頃に比べて著しく劣化しているのではないかと思えてならない。何年経っても、何十年たっても、100年経っても見飽きることのない、そしてお洒落と感じることのできる、デザイン。目先のことを考えない、将来を見通したデザインと機能性と経済性。
この倉庫、当時としては、かなりのお金をかけて建てられたものでありましょう。たぶん、高知の話題に上ったくらいの金額。そしてデザイン。
そして。
以前にも書きましたが、土佐倉庫、とにかく頑丈な建物にかありません。戦争でも焼け残り、戦後しばらく、あの2階部分が映画館になっちょったと言います。街中の映画館が焼けてしまい、映画館の数が足らんなったのでありますね。戦後の娯楽の王様は、映画でした。
街に映画館が戻ってくると、その役割を終え、また、倉庫に。
今見ても、そのエントランスのデザインは秀逸で、周囲を圧倒します。そして、重いものをたくさん保管する倉庫として、現役を続ける頑丈さ。
そう考えると、すごいコストパフォーマンスと設計思想と感心せざるを得ない。
デザインと機能。都市の景観と機能のバランス。流行や、先端性に捉われず、遠い将来を見晴るかす力とセンス。
東京には、100年後、美しい機能とデザインで都市の象徴として誇りとなるような競技場を建てて欲しい。100年の長きにわたって、地震や災害、部材の劣化に耐え、人々の目に耐えれるような競技場ならば、今、少々お金がかかっても全然かまわない。
そんなことを朝っぱらから考えさせてくれる、堀川沿いの美しい風景。