三嶺の大冒険〔3303〕2012/05/01
2012年5月1日(火)晴れ
今日から5月。上岡八幡宮境内のあじさいも、今朝はもうこんな感じ。昨日の雨に濡れ、心地良さそうでした。
さて。
昨日の三嶺。天気予報ではお天気は雨。朝、6時に山田のSさんの家を出発、物部川沿いを遡り1時間10分で光石登山口に到着。まだ雨は落ちて来ず、心地よい森の中を登り始めたのでありました。ひまわり太郎と、大昔から存じ上げちゅうSさん(64歳)の2人。Sさんは大豊の方で、若い頃は山の中で炭を焼いたりしよったこともあり、山に慣れ親しんできた酒豪で体力があり余っちゅう人物。ですきに、足下を見ると地下足袋。その辺の登山客とは一線を画しちょります。
三嶺は、昨日も書きましたように、その圧倒的な大自然で山男、山女を魅了しております。が、最近はシカ害でも有名。また、1998年の高知豪雨の際、大規模な土石流で長い長い谷が上から押し寄せて来た土砂や岩石群に埋まり、以前の景観が変わっちゅうところがあるということ。
昨日、登りに採用したルートは、その、土石流ゴロゴロルート。
以前の登山路は埋まってしもうちゅう為、沢伝いにちょっとづつ登山路らしきものがしつらえられつつあるルート。目印は樹々に結びつけられたピンク色のテープですけんど、時折それを無視して道の無いところをショートカットするSさん。大体知っちゅうき、という自信満々のお言葉ですが、Sさんの無茶っぷりは、もう、大昔から良う知っちゅうひまわり太郎。一抹の不安と期待を胸について行ったのでありました。これ、後のできごとの伏線になります。
昔、まだ二人も若かった頃、会社の同僚と一緒に兵庫県のハチ高原へスキーに行きました。鉢伏山の南、ハチ高原スキー場で滑りよりましたが、リフトで山のてっぺんまで行き、山の北斜面、つまりハチ北のスキー場へ滑り降りて、そちらで夕方まで楽しみよったのでありました。しかし。
強風が吹き始め、リフトがストップ。山の南に車を停めちゅう我々は、帰る術を失いました。山の北麓でSさんが言い出したのは「よし、登ろう」。
意味がわからん。しばらく呆然とするメンバーを尻目に、スキーをかついで山の斜面を歩いて登り始めるSさん。スキー場とはいえ、吹雪の山をスキーかついで歩いて登れるのか。かなりの標高ですき。Sさんの性格をよくご存知のTさんはあきらめで登り始めろうとしましたが、ひまわり太郎は命の危険を感じて抵抗。そうこうしゆううちに、南へ下りるスキー客だけのため、ちょっとだけリフトを動かしてくれてことなきを得ました。
そんなキュートなSさん。
で、昨日の三嶺。沢沿いに登っていく訳ですが、目印のテープが見当たらない場所がありました。当然、沢沿いにまっすぐ行くのかと思いきや、「こっちから行けるにかあらん」と、斜面を登り、その反対側の急な急な急な斜面を登り始めたではありませんか。しかしSさんが決して後戻りをしない方であることを熟知するひまわり太郎は、あきらめ、ついて行ったのでありました。
ひまわり太郎、ご承知の通り、知らないルートとかを発見してチャレンジしてみたり、それで遭難しかかって冒険したりするがは結構好きです。しかし、Sさんのチャレンジャーぶりは、ひまわり太郎の比ではないのでありました。
その斜面は、最初の数十メートルは、手がかりが、所々にある小さな樹。間違えて枯れ木をつかんだり、足を滑らせると谷へと落ちてしまいます。そして折からの強風。しばらく、斜面にかきつきながら登ると、Sさん、ヒトが通ったみたいな跡があるきこっからも登れる登れる、と爽やかにおっしゃいます。後になって冷静に考えると、あれはシカの道やったがでしょうね。あんなルートがある訳がない。
途中から樹々がなくなり、かわりにクマザサ。クマザサを手でつかみ、それだけを命綱に、強風で吹き飛ばされそうになってちょっとづつ上へよじ登ります。下を見ると怖いので、決して下は見ません。強風がものすごく、岩登りのように斜面をよじ登っていく2人。
そこでSさん「エベレスト登りゆうみたいなねえ」。至言です。
やっとこさ一息つける所まで登ると、そこからは、イバラで阻まれた斜面を無理矢理登っていくか、「青ザレ」という礫岩が大崩れをおこしちゅう危険な斜面を横切って向こうの登山道の方へ行くか。究極の選択が迫られ、そして、青ザレ横断ルートを採用したのでありました。
慎重に慎重に進まんと、ちょっと間違えると、礫岩といっしょにザアーっと谷へと落ちて行ってしまいます。ハラハラドキドキしながらなんとか横断し終え、そして通常の登山ルート合流に成功したのでありました。
そこで、下から登ってきた登山客さん一人と遭遇。
「下から見よったら、あまりにすごい所を登りゆうヒトが居るき、思わず写真に撮ってしまいましたよ。」と言われてしまいました。
さすがのSさん、「いやあ完全に迷うたねえ。登山というより訓練みたいになってしもうた。三嶺は数え切れんばあ登ったけんど、青ザレ横切ったがは初めてぢゃ。」
Sさんと登山に行く、という時点で、実は心の奥底でこんな展開を予想しちょったのは事実です。ですきに、心の準備、覚悟はあったので、まあ、それほどうろたえんかった自分を褒めてあげました。
しかしそっからの三嶺は最高。雨も心配したほどではなく、昨日の写真のように、かなり遠くの山々まで睥睨できました。帰りは身体が吹き飛ぶ風の中、尾根筋を西熊山へ縦走、その向こうのおかめ岩の避難小屋で弁当を食べて、ブナやトガの原生林の神秘的な景色の中を駐車場まで下りました。
途中、期待を超えるハラハラドキドキ大冒険もあり、貴重な貴重な体験ができた三嶺登山。夜、Sさんの家で山菜とカツオとビールと日本酒をやりながら、とてつもない充実感にひたったのでありました。
三嶺、これからちくとハマってみます。が、急斜面直登青ザレ横断ルートは、もうやめちょきます。皆さんもやめちょいたほうがエイと思います。