またまた美しき座標〔7106〕2022/09/29
2022年9月29日(木)薄曇り
このにっこりでは幾度も紹介してきた、高知新聞の特集「美しき座標ー平民社を巡る人々」。明治という時代の中で、幸徳秋水や堺利彦らの奮闘を描く特集は秀逸。現在はその第6部で、女性運動などが多く語られていて、これがまた面白い。
日露戦争が終結し、当局の弾圧によって一旦廃刊に追い込まれた週刊「平民新聞」が、意気盛んな人々の努力によって「日刊平民新聞」として復活する頃の話。明治40年頃。
同時期に、平民社で活躍していた福田英子が中心になって「世界婦人」という女性誌も創刊される。女性問題を中心に取り上げ、女性の政治参加を禁じる治安維持法の改正を主張したりしたのでした。そんな法律があった、ついこないだまであった、という事実を、僕らはあまり、知らない。
で、当時、女性向けの雑誌が複数出版されていて、その各社の記者たちが「婦人記者倶楽部」というのをつくっていたんだそう。ところが「当日の婦人客は世界婦人社の福田、九津見二女子だけで外は皆ことごとく男子で二十三人ばかり」だった。議論は完全に「男子中心主義」であったことに、平民社の面々は驚くのでありました。「『亭主が怒ってランプを打ちつけるからといって離婚するなどとは女房の辛抱が足りぬからだ』というありがたい大議論」という表現で、皮肉っているのが平民新聞。
「世界婦人」では、その日のことを、「平民社の荒畑氏の外はいずれもかびのはえたる家族主義、家庭神聖論、女子服従主義」「噴飯の至りに候」とのみの記載だって。頭きたでしょうねー。
当時の空気感の中では、幸徳秋水や堺利彦や福田英子や荒畑寒村あが、異端であった。過激派と見做されていた。その主張を見ると、現代では当たり前のことばかりなのに。
歴史を学ぶ、とは、こういうことでもあります。つまり、時代の空気感の中で人々は何を考え、大衆はどう行動していったのか。そして時代はどう流れ、社会はどの方向に変わってゆくのか。歴史を学ぶことで、少なくとも過去のことを僕らは学ぶことができる。そして重要なのは、その学びを活かしていくこと。
この新聞に書かれていることと、その後の社会の流れを見る。現代社会と見比べて、評価する。
現代に日本で起こっていること、政治家が言うておることから、その後の社会の流れを想像する。そしてそれは未来から、どう評価されるか想像する。
いろんなことを考えさせてくれる、良い連載。高知新聞、Good Job!