タイムラグ〔7035〕2022/07/20
2022年7月20日(水)晴れ!
世の中にはタイムラグというものが、あります。「TIME LAG」。時間差と訳すんでしょうかね。
今朝の新聞。恐らくは共同通信配信の全国記事で、「生乳 全国で値上げ交渉」との見出しが目を引きました。そう。この業会としては異例の「期中値上げ」の交渉が行われています。
生乳の価格は、通常、年に一度、メーカーと生産者の指定団体の間で行われる交渉によって決まり、4月から1年間はその価格が基準になって取引されます。その指定団体は、全国に10あり、我々は四国生乳販売農業協同組合連合会さんという組織と交渉します。
ところが今年。この記事にあるように、ウクライナ戦争による穀物相場の高騰に、円安という人為要因も加わって、飼料価格が暴騰しています。こないだも書いたけど、酪農家さんは、非常に厳しい状況に追い込まれており、異例の「期中値上げ」の申し入れとなった訳です。
本当なら、この4月にも、乳価が上がってても良かった。ところがご承知の通り、昨年の年末から年始にかけてや、春休み期間中、牛乳が余って困っている、という報道が溢れてたのは、記憶に新しいところ。そう。余っている状況で、値上げはできない、という空気感の中で乳価の値上げは見送られたのでした。しかし、情勢は、そんな悠長なことを言うてられんくらい逼迫してきたんですね。
ここで、業界の方もあまり触れないけど、重要なことを書いておきます。
そもそも。数年前、生乳が不足してバターが店頭から消える、という騒ぎになったこと、覚えてますでしょうか。生乳需給ってのは、非常に微妙なバランスの上に成り立ってて、生産量が少し減って需要が少し増えるだけで、需給ギャップを発生させてしまいます。そのギャップが少し大きめに出たのが、あのときのバター不足。で、マスコミも騒いだおかげで議員が動き、役所が動いて、生乳増産へ向けた政策がいろいろと打ち出されることになったのでした。増頭対策とかね。
増産、と申しましても、相手は生き物。対策を講じてから結果が出るまで、2年から3年以上の「タイムラグ」があります。蛇口を捻るようには、いきません。
そして。やっとこさ増産対策の効果が表れ始めたタイミングで、コロナ。そして昨年の冷夏のダブルパンチで、生乳が余ることにbなった、というのが、簡単なストーリーなのであります。
そして、今。疲弊した酪農家さんの中には、廃業される方も出始めています。でも、すぐには減らない。今の状況が、乳量として反映されるのには、数年の「タイムラグ」があります。生き物相手なので。
僕もこの業界長いので、肌感覚で、わかります。今、早急に手を打たないと、数年後に間違いなく、生乳が不足する。これはもう、間違いない。
余剰乳は脱脂粉乳やバターなどの乳製品に加工され、保管される訳やけど、そういった乳製品の在庫が多くなっているのが、大手メーカーが乳価値上げに抵抗している一因になってます。でも、そういった余剰乳製品の問題と、乳価の問題は、切り分けて考えんといかんのです。「タイムラグ」があるから。
確かに値上げしたら、販売量は落ちるでしょう。そこはそこで考える必要はあるけど、コストが上がったものは、キチンと価格に反映させていかないと、経済がまわらない。数年後の、牛乳やバターが足らない、という騒動は目に見えている。この業界だけが我慢大会やってても、仕方ないのであります。
そんな訳で、この秋、牛乳は値段が上がります。いつから上がるのか、いくら上がるのかは、まだ交渉中なので、未定。しかし、将来の日本人の食生活を守る為にも、ご理解のほど、何卒何卒よろしくお願い申し上げます。