磁力、磁気帯び、尻笑〔6874〕2022/02/09
2022年2月9日(水)晴れ!
良いお天気。コロナ退散コロナ退散。
今朝は、磁石、磁気、磁力の話。去年、機械式腕時計の近年の状況を知ってから、古い古いシチズン製の腕時計を手に入れて嬉しがったりしているのは、ご承知の通り。いいですね、これ。その時計に、ヤフオクで手に入れたこの金色のレトロなバンドをピカールで磨いて装着して、こんなに素敵になりました。
機械式腕時計ってのは、かなりデリケート。特に、古いのは、水とか振動とかには気を付ける必要があります。そして、磁気。近年、僕らの周囲には、夥しい、磁気を帯びたものが転がっております。気を付けて見回してみよう。パソコン、スマホ、IH調理器、バッグの留め具、などなどなどなど、とにかく磁気を帯びたものだらけ。そして機械式腕時計の弱点が、磁気。
ヒゲゼンマイのような極小の部品が、その駆動を司っている訳やけど、それが磁気を帯びてしまうと、正確に時間を刻めんなってしまうんですね。磁気を帯びているかどうかを調べる簡単な方法は、方位磁石を近づけてみること。磁石の針が振れたら、その時計は磁気を帯びてます。
その場合は、時計屋さんで磁気抜きをしてもらってもいいし、こんな簡単で安い道具で、磁気抜きすることも、できます。便利やね。
で、磁石。電磁力がどうしたとか、マックスウェルの法則がなんだ、とかは難しいので置いちょきますが、明治期以降、日本は、世界の磁石鋼の研究開発において、常に先頭を走ってきたと言います。本多光太郎さんとか三島徳七さんとか増本量さんといった研究者が活躍したんだそう。この本に書いてます。しかし、太平洋戦争の頃になると、新規技術が世界を席巻し、日本は大きく遅れをとる。
しかしまた、頑張って巻き返す日本の研究者。特に、佐川眞人氏が開発したネジウム磁石は、再び日本の磁石研究を世界のトップに押し上げ、エコ時代の推進に大きな影響を与えたと、いいます。僕が乗ってるプリウスのエンジンも、そのネジウム磁石がなければできなかったそう。現在のEV自動車開発競争も、ネジウム磁石抜きには語れない。そんな話、今朝、磁石のこと調べてオーテピアでこんな本を発見するまで知らんかったのであります。世の中、知らないことだらけ。
ちなみに、明治期から昭和初期にかけて、日本人にとって磁力とか磁石とかはどういう存在だったのか。もちろん調べてみるのは僕らの「大言海」。大槻文彦先生のとんでもない大仕事「大言海」で調べてみました。
で、調べても、「磁力」という項目は、ない。そう。当時はまだ、磁力という言葉は一般的ではなかったのである。「磁石」はあったけど、こんな感じ。
磁石
「ハリスイイシ。鉱物の名、鉄鋼属、色、黒く、或は、褐色を帯ぶ、外面に細かき孔あり、毛の如きものあり・・・後略」。僕らが思う磁石とは違うみたいね。ハリスイイシ。当時の磁石に対する認識は、そんなものか。
「磁力」という項目はないのに、「磁石」の横に「尻笑」という項目がありました。
尻笑
「しりわらひ。猿の尻わらひと云ひて、己れが尻の赤きを知らず、他の赤きを笑ふこと。自分の落ち度に心附かず、他人の欠点を嘲るの愚を云ふなり。」
深いねー。深い。
まだ、腕時計の磁気帯びを心配する必要がなかった時代、尻笑という言葉がありました。磁力も気にせんといかんけど、尻笑にも、気をつけよう。