ひまわり文庫2021年7月の新刊〔6652〕2021/07/02
2021年7月2日(金)晴れ!
そんな訳で、ひまわり文庫、2021年7月の新刊。
このところひまわり文庫には珍しく小説系が増えてたけど、今回は少ないねー。小説、2冊だけ。まあ、これがいつもペースっちゃあペースやけど。
今回の特徴としては、須崎で6月にオープンした素敵で小さな本屋さん、「書肆 織平庵」で買った本があることですね。このにっこりでも書いたけど、音楽関係の大先輩が齢69にして始めた本屋さん「書肆 織平庵」には、新刊本も古本もあるけど、古本は僕ら世代のツボだったりします。
そんな訳で、まずは「築地」。
今はなき、築地場内の姿を、アメリカ人の目から見て観察、研究し、詳細なレポートに仕上げた本。なかなか有名な本で、築地マニアの僕が今まで読んでなかったのは、失態。築地マニアの名が廃る。マニアじゃないけど。魚市場の仕組みとかがとにかく詳しい。何ヶ月も毎日通って調査してますきんね。しかも、日本人みたいに先入観が、ない。築地本の決定版「築地」は、「書肆 織平庵」の一角、モモちゃん文庫に並んでました。
「ビートルズ革命」も有名本やね。1972年4月、ジョンレノンにインタビューした内容が本になりました。まだ解散して間がない頃。一番ギクシャクしてて、ジョンレノンが一番とんがってた時期のインタビューなので、とにかく臨場感がすごいよね。率直過ぎる見解が溢れてて、とんがってて、当時の雰囲気を伝えてくれます。「書肆 織平庵」の古本音楽コーナーに並んでました。最初に買った人の「昭和47年5月2日」という手書きサインが、同時代感を醸し出す。
今年、名ドラマーの村上ポンタ秀一さんが亡くなった。2006年に発行された、ポンタさんの聞き書き自伝「自暴自伝」も「書肆 織平庵」で書いました。すごいね、やっぱし。イメトレを経て、スティックを握った瞬間から「すごいドラマー」になっていたという噂は本当だった。これもいい本でした。
「書肆 織平庵」で買って読んだのは、今回はこれだけ。まだ買ってるけど、読んでないのもあるし。
「書肆 織平庵」の書店主さんは、5年ほど前まで、「オジイ川端の浅い人生」という面白いブログを書いておられました。久々に読み返してみたら、面白いこと面白いこと。文章も、巧い。で、そのブログの中に中島らもさんについて書いてる回があって、そこに、中島らもが、破滅的アル中になってた時期のことを小説にした「今夜、すべてのバーで」が傑作だと書いてるのを見つけました。まだ読んだこと、ない。そこで買って読みました。いやー、身につまされる。同級生の酒飲み連中に読んで欲しいねー。
今月新刊の小説は、その「今夜、すべてのバーで」と、「ホッグズバックの怪事件」。このイギリスのミステリ作家クロフツによる古典は、TSUTAYA中々店様で、書いました。
ロシアの指揮者、ワレリー・ゲルギエフは、ひょっとしたら今の僕が一番好きな指揮者かも知れません。「火の鳥」や、チャイコフスキーの交響曲を聴いたときは、ゾクゾクしました。ロシアの音楽は、ロシア人による演奏が、すごい。と、以前から思ってて、特にゲルギエフが振ってマリインスキーが演奏した「悲愴」などは、史上最高の名演だと思ってます。いや、クラシックをそんなに聴いてないので、とても少ない情報量の中からの個人的感想なので、真に受けちゃダメだよ。そのゲルギエフと親交が深かった元NHKモスクワ支局長、小林さんが書いた評伝、「希望を振る指揮者」。すごい。やはり、すごい人でした。ゲルギエフ。エネルギーと熱い思いが、すさまじい。
これ読んで、もうちょっとクラシック音楽のことも読んでみようと思って買ったのが「音盤考現学」。日本のクラシック音楽評論と言えば、片山杜秀。その解釈や説明は独特やけど、不思議な説得力がありますね。この本は、日本の作曲家の作品やレコードなどを評論した片山ワールド。
僕は、戦前戦後の政治家の中で一番尊敬できる人物、と言われたら迷わず石橋湛山をあげます。現代史で著名な保坂正康さんも、そうみたい。「石橋湛山の65日」。体調を崩し、65日しか首相ができなかった石橋湛山ですが、その功績は、何年も首相やった人物よりも遥かに大きい、という論評。「首相の格は、任期にあらず」。僕もそう思う。これが、政治家だ。政治を志すなら、石橋湛山に学べ。大切なのは、矜持だ。思いだ。
「熊楠と幽霊」は、本屋さんでみつけた新書。知るの巨人、南方熊楠が、心霊現象みたいなのをどう捉え、考えてたのかを考証してます。まあね。熊楠ですきんね。その実像は、僕らの想像の枠外にある。
「アースダイバー 神社編」。ご存知中沢新一さん「アースダイバー」シリーズの、新境地。こないだから幾度か触れました。中沢新一言うところの、スンダランド系の人類であった縄文人が、同じくスンダランド系でも違うルートをまわってやってきた弥生人と混じっていきながら、日本人の「神」に対する信仰の姿ができあがっていった、そんな風景を描いています。伊勢神宮や諏訪大社、大和の大神神社に痕跡として残されている、縄文時代からの信仰の姿。さすがの中沢理論は、僕の田村遺跡理解に新しい地平を切り拓いてくれました。面白かったー。
最後。
今、桂浜の風景変遷とかに興味があって、オーテピアでそんなコーナー眺めてたら、この本を発見。「流れと波の科学」。高知大学名誉教授だった上森千秋先生が、高知市文化振興事業団から1990年に発行した本。河川や海岸の地形が、どのようにつくられ、変遷していくのか。実験科学的に、数学的に、解き明かしてるけど、そのフィールドは高知。もちろん桂浜界隈の海岸地形の変遷とその理由なんかも研究してて、とても貴重な成果が述べられてました。
これは欲しい。ということで高知市文化振興事業団さんに、なんと一冊だけ残っていたこの本を手に入れました。これは宝物だ。
以上、今月の新刊。古本も多いけど、ひまわり文庫ルールでは新刊ね。
で、今月のイチオシは。悩むねー。悩む。「アースダイバー神社編」も「築地」も捨てがたいけど、やはり「ビートルズ革命」でしょうかねー。「書肆 織平庵」、モモちゃん文庫に敬意を表して。
また、ゆっくり行きたい「書肆 織平庵」。本見ながらゆっくり飲みたい「書肆 織平庵」。