工業団地の中の、森〔6624〕2021/06/04
2021年6月4日(金)雨
梅雨の朝。雨はしっかり降り続いています。
ここは、ここ。会社の近所。ここでは今、南国市の工業団地造成工事が進んでいます。水路や田んぼが入り組んだ土地はすっかり均されて、真ん中を突っ切る道路もできました。
こんなページがあります。この工業団地は「南国日章工業団地(仮称)」なんだそう。入居募集対象は「工場」なんだって。どんな工場が来るのでしょうか。
興味深いのは、その造成地の真ん中に残された小さな森。残さなくてはならん、なにかが鎮座ましましてるのでしょうか。なにやら古い鎮守の森に見えます。わざわざ残したことは、明らか。造成前の航空写真だと、これ。1970年代の航空写真でも、これ。ところが1960年代遡ると、森は、見えません。森は無いけど、森になるようななにかが鎮座ましましているのかも知れませんね。
こうやって、人類は、大自然や、そこに存在する「なにか」と共に、生きてきた。
最近、道路工事とか学校建設とかで、かなり重要な遺跡が出土したりして、その保存問題がクローズアップされてます。最近の話題でいえば、安芸の瓜尻遺跡。中学校建設に際しての発掘調査で出土。かなり重要な、安芸だけでなく土佐国の成り立ちに関わる遺跡ということで、それをどうするのか、議論になっています。せっかく中学校を作るのなら、その教育に資するような保存方法、考えたい。
こないだ、新聞に、奈良で、かの行基上人の供養堂ではないか、とされる遺跡が発掘された記事、載ってましたよね。平城京の西に隣接した丘。宅地開発に際してでてきたもので、記事によると「専門家から現地保存を求める声が上がり、県が宅地開発業社と交渉したが条件が折り合わず、断念。」ということ。ちょっと、悲しい。で、その発掘に携わってる研究所に友人がおりまして、その後のこと、教えてもらいました。
やはり政治的な思惑もからんで保存は難しいようで、その研究所では、手作り感満載の動画を作成し、You Tubeに公開して、その雰囲気を後世に伝えていくことにした、とのこと。ドローンも使った、なかなかわかりやすい動画だ。発掘担当者の思いが伝わってきますねー。いい。これは、いい。
ただ、こうやって動画で保存できたから現地保存はいいではないか、という短絡的な議論になるのは、警戒しているようです。
ともあれ、高知なんかでも、特に道路工事とかでは、遺跡を壊したり埋めたりするケースが多いので、こんな動画を作ってその遺跡状況を残していくのはいいね、と思いました。専門家の「調査報告書」だけでは、僕ら素人にはイメージつかみにくいし、そもそも読まない。
遺跡が、保存するほど重要なのかそうではないのか。それを誰が決めるのか。これからも、そんな議論が果てしなく繰り返されていくんでしょうな。それを決めるのは力関係だったりして。ああ。
でも、日本人の心性として、何かを敬う、なにかを恐れる、というのは常に存在してます。なので、なんでもないところに突然、祠や森が残ってたりします。
この小さな森は、そうかも知れんし、そうではないかも知れません。どちらにしても、工業団地の中の小さな森は、なんか、嬉しい。