あかつきの金星〔4531〕2015/09/11
2015年9月11日(金)快晴
雲ひとつない、青空が広がる高知。しかし、関東から東北にかけての豪雨は、考えられないような大雨の被害をもたらしております。本当に、心よりのお見舞いを申し上げます。大自然の恐ろしさをまざまざと見せつけられる、そんな豪雨。そう言えば、今日であの大震災から4年半。地球上の生物は、地球の自然環境の中で育まれ、守られ、生き抜いてきた。しかし時に、生物にとって激しく厳しい状況が起こる。それが地球というもの。自然というもの。大自然の素晴らしさと脅威とともに、生きてゆく定め。今一度、心して接していかんといかん、と考えさせられます。
大自然の美しさと言えば、金星。明けの明星。今朝、明るみ始めた東の空に、美しい三日月と金星。正確に申しますれば、月齢28のお月様と、金星。お月様には金星がよく似合う。
大自然の激しさと言えば、金星。
金星は、その美しさとは裏腹に、地球に住む我々のような生物にとっては地獄のような厳しい自然環境であることがわかっちょります。
このにっこりでは、人類の金星探査について、何度もビッシリ書いてきちょります。その歴史を整理したのが、これ。
金星探査に旧ソ連が果たした役割は、とてつもないものがあります。ソ連の金星探査機には「ベネラ」という名前がついちょりますが、これはヴィーナス、つまり、金星。
この写真のような、夜明け前の仄暗い時間帯を、日本では暁と言う。あかつき。なんという美しい言葉。そんな暁に一番似合うのが明けの明星、金星。
そんな訳で、日本が、近年、金星に送り込んだ探査機は、「あかつき」という。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、2010年5月21日に種子島宇宙センターから打ち上げた、金星探査機が、「あかつき」。
誰がつけた名前か知りませんが、美しい名前だ。すばらしい。
その「あかつき」、2010年12月7日に、金星の周回軌道に入って探査を始める予定であったのが、エンジントラブルで軌道投入失敗。スイングバイして、太陽を周る公転軌道に入ってしまったのであった。
「あかつき」の公転周期は203日。金星の公転周期は225日。そんな訳で、軌道修正などの紆余曲折があって、5年後に、もう一度「あかつき」は金星に最接近することになりました。チームは、それまでに、別の小型エンジンとかを代用して軌道投入をするよう、準備をしよう、と決断。
で、今年、2015年12月7日に、再び金星軌道への投入を試みることになったのであります。すごい。
しかし、想定外の事態であることは間違いない。
金星というのは太陽に近い。で、今回の事態で、当初想定しちょったよりも、太陽に近い場所を通過することになり、想定外の高温に晒されることになったのであります。想定は100℃で、実際は140℃。
その、太陽に一番近い「近日点」を、こないだ、8月30日に通過したんですね。
その高温の中でも機器が無事に動いているかどうか確認できるのは、一ヶ月後とのことで、今はドキドキしながら固唾を呑んで見守っておる、ということになります。
金星。
90気圧以上、450℃以上で、二酸化炭素の大気に硫酸の雲。我々のような生物にとっては、それこそ地獄のような環境の金星。
気温も凄まじいが、90気圧の大気がいかにすごいかと申しますれば、ソ連の探査機ベネラ10号が、地上50kmから自由落下で着陸した、という事実からも推察できましょう。重さ660kgの探査機が、50kmの高さから自由落下しても、気圧がすごいので、ゆっくりしか降りてゆかない。それが90気圧。因みに、金星の重力は、地球とメッソ変わりませんきんね。
そんな金星には、気象学的に理由がわからない、不思議な現象がたくさんあるそうです。スーパーローテーションという暴風は、毎秒100mというすごい風。自転速度の60倍にも及ぶという風が何故発生しているのか。
そんな謎を解明することが期待されちゅう「あかつき」。その謎の解明は、ひょっとしたら地球環境の解明にも役立つのかも知れない。
大自然の脅威には勝てない人類ですが、メカニズムを解明して予報することや対策を講じることはできる。
大自然は、征服するものではない。征服できるものではない、ということを、我々は思い知らされております。大自然は、知り、予報し、対応しながら共存していくもの。