大山岬、岩屋、海食洞〔4396〕2015/04/29
2015年4月29日(水)昭和の日
薄曇り。昭和の日。我々世代にとって4月29日は天皇誕生日ですが、今は昭和の日。今日が、連休の前哨戦ということになります。とは言え、明日も明後日も土曜日も仕事なので、単なる祝日ではありますが。
で、今日は県東部に来ちょります。今日から、正式に東部博というのが始まる、高知県東部。今日の用事は東部博とは関係無いのでありますが、なんとなくウキウキする高知県東部。
ここは、大山岬。高知市から東向いて行きよりますと、安芸市を過ぎて伊尾木洞の前を過ぎ、しばらく走りよったら大山岬。
つい先日、大山トンネルという立派なトンネルが抜けました。普通にトンネルを走ると、今までのように、大山岬の奇岩群を見ることは無くなりました。
大山岬。
ついこないだ迄の国道55号線は、大山岬のトン先、奇岩群の上を通っちょりました。その旧国道よりも海側、海沿いに、それより以前の旧道があります。巨大な岩の間を抜けるように通る道。その道沿い。自然にできた岩の洞穴を利用して、「岩屋」さんという喫茶店が佇んでおります。
その喫茶店から見る太平洋の風景は格別で、人気がありました。営業時間は日没まで、というのが新鮮やった、岩屋さん。しかし。
岩屋さん、建物の老朽化で、来月には閉店するとのこと。なので、今日は立ち寄ってきました。
写真は、その「岩屋」さんの裏側。左の建物が「岩屋」さん。このように、巨大な洞穴を利用したつくりになっちょります。ここで撮影しよったら、丁度、お店のママさんがチリを焼きに出て来られたので、お話を聞いてみました。
もう、35年になるそうです。小生、35年前に開店した直後にも来ちょります。コーヒーカップが全部違うデザインのカップで、そのお客さんの雰囲気に合わせたカップを出してくれる、ということやったと記憶しちょります。羊羹も、おいしゅうございました。残念やけど、この老朽化した建物を立て直してまではようせんきね〜、と淋しそうに話して下さいました。
この岩屋さんは、旧旧国道沿いにあります。その道は、とても便利な地理院地図で調べてみますれば、標高7m〜8m。その道沿いにある「岩屋」さんも、同じ標高。
この洞穴。地学用語で言いますれば「海食洞」。
素人でも想像できるように、かつては波打ち際にあり、波によって侵食されてできた洞穴。それが、海面の低下か陸地の隆起によって標高7〜8mになった、ということだ。素晴らしい海食洞を、ここ、大山岬で見ることができるのであります。
大山岬では、他にも、波が海底岩盤を削って平らにした「波食棚」とか、波によって崖がへこんだ「ノッチ」とか、色々な形状の岩を楽しむことができます。全部、南海地震と度に隆起して、海水面を離れて今の場所まで上がってきた岩石。
最近、やっとこさ注目されるようになってきて、東部博でも重要な観光ポイントのひとつになった伊尾木洞。伊尾木洞は、ここ大山から西へ、伊尾木という集落の山側にある、素敵な洞窟。以前に、何度もご紹介してきた小生お気に入りポイントなのですが、あの伊尾木洞も「海食洞」なんですね。随分雰囲気は違いますが。
伊尾木洞の場合、300万年くらい前の堆積層が、海によって侵食されてできたもの。最初は行き止まりの洞穴やったのが、山側の柔らかい地層が削られ、谷のように掘り込まれた地形となって、伊尾木洞はその谷へ抜けるトンネルになりました。
堆積時代が新しく、柔らかい地盤なので、あんな風景が出来上がったのであります。この大山岬は古い固い岩石が海に侵食されたので、こんな風景。同じ「海食洞」でも。随分違いますな。
ここ、大山岬の海食洞は、巨岩の隙間が立体迷路のようになっており、奥まった場所にお地蔵さんがおったりする、昔からの信仰の洞穴。
伊尾木洞は、なんと言うたち、あの不思議な幻想的空間。シダが生い茂る緑の空間は、まるで異世界に飛び込んだような気になります。そして、あのオブジェたち。もう、伊尾木洞にあのオブジェはなくてはならないものとなっています。すごい存在感で、融け込んでおりますな。
東部博へ出かけられましたら、室戸のジオパークだけでなく、大山岬や伊尾木の海食洞も楽しんでください。西分漁港のメランジュも、芸西村〜赤野の浜堤も、大野台地や西山台地といった海成台地も、海底地すべりで変形した黒耳などの奇岩群も、行当岬の、南海地震の液状化現象でできた脈のある砂岩も、全部楽しんでくださいね。
ああ。地学って、素晴らしい。