景観と機能〔3366〕2012/07/03
2012年7月3日(火)降ったりやんだり
ここは鏡川。今朝4時過ぎ。まだ暗い時間帯ですが、シャッタースピードを遅うして撮影してみました。ですき、対岸のビルの灯りが煌々。
丁度満潮に近い潮が止まる時間帯で、川面は文字通り鏡のよう。美しい水道橋を映しちょります。
この美しい橋は、昭和54年につくられました。丁度、橋の建設しゆうところが高校の教室から見えよった記憶があります。立派な橋ができゆうよ、と思いよったら、完成したら水道の橋やったのでビックリしたことでした。
橋の袂に、この橋が、「近代水道百選」に選定されちゅう旨を書いた碑があります。それによりますれば、「我が国最長のニールセン型式の全溶接鋼管構造を中央径間に採用し、水の価値の認識を高めうる水道施設として、清流鏡川とその周辺環境との調和空間的構造 美を兼備し、機能性、経済性を損なわず、力学的にも無駄の無い構造で、トータルバランスのとれた、国際的にも優れた橋梁作品である。」ということ。公共建築物をつくる場合、その経済性機能性も考慮せんといけませんが、景観に合った美しさ、というのもこじゃんと大切。人類は、そんなことを考えて都市や公共建築物、インフラを整備してきました。高い安いだけでは、街は住みやすうならんことは歴史が証明してくれちょります。
大事な大事な視点。
旭地区の再開発事業も、機能性のみに目をやると、不自然で味気ない街になってしまうことが危惧されちゅう訳です。
阪神大震災後、機能的に幾何学的計画的に再建された長田と、街並み、地域性、歴史などを考慮して再建された灘とで、どちらが賑わいを取り戻したか、という話は有名ですき、見に行ってみたらエイですね。
この水道橋、昨年の末から今年の4月にかけての数ヶ月間、耐震補強工事をしよりました。で、この土手の上は通行できんなっちょりました。エラい長い長い工期でしたがやっと完成。あの工事の規模を見よりましたら、どうやら、この水道橋、高知市民にとってかなり重要な水道管ながやないろうかと思いました。
向こうに雑喉場橋、その向こうに潮江橋の灯りが見えよります。その間の静かな水面で、昭和初期、旧制中学校の学生たちが西洋式の水泳を練習し始めました。洋書の専門書を読みながら。
近所の菜園場に住みよった少年が、この水面で西洋式の泳ぎ方をおにいちゃんたちに教えてもらい、どんどんと速うなりました。
その少年は高知商業学校に進み、14歳でロサンゼルスオリンピックに出場、1500m自由形で金メダルを獲得したのでありました。何度かこのにっこりでもご紹介した北村久寿雄さん。で、京都の三高に進学して競泳選手からは引退、東京帝国大学に進んだというマルチスペシャルスーパーマン。
この静かで美しい風景が、そんなとてつもない人物を育んだのでありました。