寺田寅彦文学碑〔239〕2003/12/11
2003年12月11日(木)雨
久し振りのお湿りですね。冬らしい冷たい雨で、季節を感じさせてくれます。そんな叙情的気分のなかで、またまた高知城西の文学碑通りへ来てみました。
にっこりひまわり[224]で、槙村浩の文学碑をご紹介しましたが、その場所から少し北へ行った堀の曲がっている地点に鎮座ましましちょりますのがこの文学碑。
ご存知寺田寅彦先生の文学碑ですね。寺田寅彦につきましては、にっこりひまわり[79]で書きました通り、「寺田物理学」という独特の分野を切り拓いた物理学者であり、同時に夏目漱石の弟子でもある文学者でした。昨日は情緒的まちづくりの話をしましたが、今日は情緒的物理学の寺田寅彦のおはなしでございます。
花物語
いくつ位の時であったかたしかには覚えぬが、自分が小さい時の事である。宅の前を流れている濁った堀川に沿うて半町位上ると川は左に折れて舊城の裾の茂みに分け入る。その城に向うた此方の岸に廣い空地があった。維新前には藩の調練場であったのが、其の頃は県庁の所属になったままで荒れ地になっていた。一面の砂地に雑草が所まだらに生ひ茂り處々昼顔が咲いていた。
「昼顔」より
この文章は、明治41年に「ホトトギス」に書いた随筆のなかの一文で、このなかに出てくる「川は左に折れて」の、カーブの地点にこの碑が建てられちょります。つまり、寺田寅彦さんの家は、ここよりもう少し東にあるのであります。