大阪市中央公会堂の志〔8235〕2025/11/01
2025年11月1日(土)晴れ!
良いお天気の大阪、中之島。今朝、早朝に車で高知を出発してやって来ました。ここは、「大阪市中央公会堂」。この、赤煉瓦の素晴らしい建物は、大正7年に竣工したもので、2002年に国の重要文化財に指定されています。
この建設に至る物語は、なかなかすごい。建築資金を提供したのは、「北浜の風雲児」と呼ばれた相場師、岩本栄之助氏。両替商だった父の遺産50万円に、自分が相場で稼いだお金を足して100万円(現在価値では数十億円)を大阪市にポンっと寄付し、その資金で建設された公会堂。
明治42年に、渋沢栄一を団長とする渡米実業団に参加した岩本栄之助氏が、アメリカで成功した実業家が慈善事業に寄付する習慣に感銘を受け、また、アメリカの公共施設の立派さに驚いて、帰国後、寄付を思いついたとのこと。
色々と検討が為された結果、その寄付金で、大阪市民みんなが利用できる公会堂を建設することとなり、そのデザインコンペが実施されたのでした。
コンペで1位になったのは、当時29歳の岡田信一郎。そのデザイン案を元に、大御所辰野金吾、片岡安が実施設計を行い、大正2年に着工、大正7年に完成しています。
100万円を寄付したとき、岩本栄之助氏は33歳。デザインを考えたのは29歳の岡田信一郎。明治大正の若者って、すごいよね。
岩本栄之助氏が「義侠の相場師」と呼ばれた経緯は、このウィキに詳しい。そして、すごい人生を送っておられます。最後は相場で失敗するけど、この歴史的建造物と数々の功績で、長く人々の記憶に残されている、岩本栄之助氏。
さて、この建物。外観の赤煉瓦が素晴らしいね。度重なる改修で、創建当時の意匠が失われていたのを、1999年から3年かけて創建当初の姿に復元、バリアフリーや耐震も施され、レトロモダンな外観と近代設備を兼ね備えた公会堂に生まれ変わっています。
ウィキによると、「赤煉瓦ネットワーク」による「20世紀日本赤煉瓦建築番付」で西の横綱に選ばれてるそう。宜なるかな。
外壁の赤煉瓦、一見、小口面ばかりのドイツ積みに見えるけど、これは「レンガタイル」。光沢感があるよね。必見なのは、地下一階の通路の構造用レンガ。この写真。ここは、イギリス積みでキチンと積まれてます。長手積みの段と小口積みの段が交互に現れるイギリス積み。この暖炉みたいなのは、創建当初の、地中煙道。暖房汽罐質床下に埋設されてたものなんだそう。ゆかしいねー。
明治初期、レンガ積みが日本へ入ってきた当時は、フランス積みが主流でした。が、その後、機能的なイギリス積みが主流になったのが、日本。そんな時代を今に伝える大阪市中央公会堂のイギリス積み。
今日は、通常の一般公開だけでは入れない場所まで、入ることができています。貴重な体験。この美しいレトロモダンな建物を満喫する、秋。
