地震と流言〔7439〕2023/08/28
2023年8月28日(月)晴れ!
夜明けもだんだんと遅くなってきました。今、朝5時。会社の、僕の部屋の外はまだ真っ暗で、虫の声が聞こえてくるばかり。8月も、あと、4日。
今朝は高知新聞ネタ。今、高知新聞一面では、「流言禍」という連載をやってます。この9月1日に関東大震災から100年を迎える、ということで、関東大震災で実際に起きた流言飛語による悲劇にスポットを当てた連載。関東大震災の折、朝鮮人が放火、略奪、井戸に毒を投げ入れている、などの根も歯もない流言が広がり、多くの朝鮮人が虐殺されたという事件を掘り下げ、そういったメンタリティが現代に通じる怖さへの警鐘を鳴らしています。高知でも、そんな噂がまことしやかに広がり、流石の科学者寺田虎彦先生が疑問を呈していたりします。確かにあった、そんな歴史。
で、その流言に関連して、安政南海地震の際に土佐であった流言事例を、今朝の紙面で紹介してました。「佐川の山に津波来る」という見出し。佐川町斗賀野のお寺に寄進された絵馬に、山に逃げる斗賀野の人たちが描かれています。1854年に発生した安政南海地震。その際、斗賀野地区に津波がやってくる、と誰かが言い始め、パニックになったという話を題材にした絵馬。斗賀野は、ここ。標高は約100mで、海岸から9km離れ、海と斗賀野の間には標高280mの峠がある。小惑星の衝突でもあるまいし、今考えたらとんでもない流言やけど、信じた方も多かったのである。
これはもう荒唐無稽やけど、安政南海地震から1ヶ月が経過した宇佐でも、根拠不明の流言があったことが、このにっこりでも幾度か紹介してきた「真覚寺日記」に書かれている、という話も、今朝のこの記事に載ってます。宇佐真覚寺の住職、静照さんが地震後に書き続けた「真覚寺日記」。
安政地震が11月5日で、翌月11月18日。新聞には紙面の関係で少しだけ抜粋されてるけど、実際の文章は、これ。現代文へ読み下ししておきます。
前半略
五ツ過ぎより半時くらいづつ、間を置いて頻りに揺れた。恐れて家を飛び出る程のことは、なかった。今日は総じて風もなく、天気温和でまるで春のよう。今日の早朝の地震の際、新在家を往来する者が、いたずらに声を張り上げて「大津波が来るぞー」と叫んでいった。その言葉を信じて、まだ夜も明けてないのに人々が騒ぎ始め、取るものも取りあえず山へと逃げた。途方に暮れて泣き叫ぶ者も、あった。
中略
新在家の男が、その噂を騒ぎ立てた者を捉えて「我らが山へ避難している間に家宅に侵入して盗みをしようという謀りごとであろう」と罵って大喧嘩となったとのこと。この節、人心が落ち着いていないので、流言を本当と思って騒ぐのも尤もである。
実はその前、12月4日にも、「今日から明日にかけて、再び大津波がくる」という噂が流れたことが、日記に書かれています。
人間の、パニック心理の怖さ。ただ、江戸時代の地震における流言の広がり方と、関東大震災当時の流言の広がり方とには、違いがあります。関東大震災の際には、新聞等のメディアが、流言の拡大に大きな役割を果たしていたのでした。
人間のパニック心理というのは、静照さんも「本当と思って騒ぐのも尤も」と書いているように、なかなかに根源的なもの。とすれば、関東大震災当時とは比べ物にならないくらい情報網が発達し、SNSが当たり前の現代、大災害に際して僕らが心しておかなければならないことは、寺田寅彦先生のような、科学的で冷静な視点と行動である、と思ったりします。
このタイミングでこの特集。高知新聞、Good Job!