日本推理作家協会賞〔7342〕2023/05/23
2023年5月23日(火)薄曇り
ミステリ、お好きですか?いわゆる推理小説。昔なら探偵小説。
我らが高知県の大先輩に、森下雨村さんがいらっしゃいます。明治23年、牧野富太郎博士と同じく佐川で生まれ、早稲田大学で学んだ偉人。海外の探偵小説を翻訳、日本に紹介したり、評論したり、自分で探偵小説を書いたり。日本の探偵小説黎明期に活躍してますが、大正9年に探偵小説雑誌「新青年」の編集長となってからの功績は、とてもとても大きいと思います。その雑誌で江戸川乱歩を見出して世に出したことは、余りにも有名。かの横溝正史さんが「森下こそ日本の探偵小説の生みの親といっても過言ではないだろう」と語っているくらいの、人物。佐川は、こんな偉人も輩出しておるのであります。
その、森下雨村によって世に出た江戸川乱歩が昭和22年に設立した団体が「日本探偵作家クラブ」で、翌昭和23年から「探偵作家クラブ賞」という賞を創設したのでした。日本の優れた推理小説に対して送られる賞で、「探偵作家クラブ」が「日本推理作家協会」となってからは「日本推理作家協会賞」となり、我が国推理小説で最も権威のある賞として君臨しているのであります。第一回の長編賞受賞は横溝正史さんで、それから現在まで、連綿と続き、その受賞者には綺羅星のごとくすごい推理小説作家さんの名前が居並びます。
そんな「日本推理作家協会賞」。この5月11日に発表された本年度、第76回日本推理作家協会賞の短編部門に、我らが西澤保彦さんの短編「異分子の彼女」が選ばれたのであります。すごい。
西澤保彦さんは、高知県安芸市出身。で、アメリカの大学で創作技法を学び、高知へ帰ってきてからミステリを書き続けている作家さん。僕より一学年上。
代表作は「七回死んだ男」とされてるけど、その緻密で意外性のあるストーリー展開は見事で、日本のミステリ作家の中でも重鎮と言ってよい、そんな立ち位置を確立されてます。僕は、西澤作品、ほとんど持ってて、読んでます。
実は、まだ坂東眞砂子さんがご存命の頃、同じく高知在住の作家さんということで、一緒に呑んだりしたこと、あります。とてもとてもいい方でした。本当に良い方。その真面目な人の良さが裏目に出たのか、その後、奥様を病気で亡くされてからお酒に溺れて生きていく活力を失い、衰弱し切って2017年暮れに救急搬送されたという西澤さん。
そこから入院を経てお酒を断ち、周囲の応援もあって立ち直った西澤さんの近作が「異分子の彼女」。僕の大好きな、そして立ち直ってからの西澤さんの代表作になる「腕貫探偵」シリーズの中の傑作「異分子の彼女」が、日本推理作家協会賞を受賞したのであります。これは、嬉しい。
今回の「異分子の彼女」も、西澤ワールド全開。高知を連想させる地方都市を舞台に繰り広げられる、いわゆる安楽椅子探偵物。面白かったです。
そうそう。西澤作品に、幾度もご紹介しているTSUTAYA中万々店のスーパー書店員山中さんが解説書いてるのを見てびっくりしたのは2年前。そして、今回の受賞。嬉しいねー。一昨日の高知新聞さんにも大きく取り上げられてて、あまりに嬉しいので、今朝のこの紹介となりました。
皆さんも、ぜひ、ご一読を!