ひまわり文庫2020年11月の新刊〔6410〕2020/11/02
2020年11月2日(月)雨
そんな訳で、ひまわり文庫11月の新刊。
今月は、数学とか物理とか地学とかの自然科学系が、ないですな、珍しく。早速痛快丸かじり分野から、いってみよう。
右上は安定の伊坂幸太郎。「SOSの猿」。伊坂幸太郎らしい、一気読みできる本。五十嵐真という登場人物が出てくるけど、弊社にも居ます。五十嵐真くん。関係ないけど。
「ザ・プロフェッサー」は、ロバートベイリーのデビュー作で、万々のTSUTAYAさんをウロウロしてて、目に止まった本。そうそう。TSUTAYA万々店って、いいですよ、なかなか。本の紹介の仕方や展示にものすごい工夫があって、店員さんの気持ちが溢れてる本屋さん。で、店員さんお薦めのコーナーみたいな台上に「とにかくべらぼうに面白い」というPOPとともに並べられてたので、ついつい買ってしまいました。いやー、さすが。「とにかくべらぼうに面白い」本でした。アメリカらしい展開の痛快丸かじり。そう。まさしく痛快丸かじり。
その左は、柚月裕子「盤上の向日葵」上下巻と、BOOK OFFで買った「検事の信義」。これもまた、一気に読めてしまう、頭の中リフレッシュの本ね。こちらも安定の柚月裕子。
さて。
下段いきましょうか。右端は「メモの魔力」。この前田裕二という現代社会で大成功している人物は、とにかくメモ魔。人生に対しての強い強い目標とモチベーションを持ち、邁進している方なんですが、その原動力に「メモ」があるんだそう。人との会話や読書、映画鑑賞、なんでもかんでもメモを取り、整理し、抽象化し、転回していく。そうすることのメリットを、この本では力説してます。そこで僕も、見習ってメモを取ることを心がけるようにしました。前田さんまではとてもとてもやけど、なんか、仕事が整理されて前に進み始めてきた気がしてます。ホントです。
「マルジナリアでつかまえて」。マルジナリアとは、書籍の余白のこと。余白にメモを書いたり本文に棒線を引っ張ったりする人、いますよね。この本では、夏目漱石などの有名人が書籍の余白に書いたものを紹介し、その楽しさを説いてます。なるほど、そういう楽しみ方もあるのか、という感じ。これ読んでも、まだ僕は、本にメモを書き入れる気持ちには至ってませんが。新聞の書評欄で見て、書いました。
「すごい進化」は、生物の進化には必ず合理的な理由がある、という立場から、一見不合理に見えるようなとんでもない進化の理由を解いてゆきます。なるほど、という感じで一気に読めました。
この鈴木紀之先生、現在は、弊社から歩いて15分の、高知大学農林海洋科学部の准教授。こないだ八重洲ブックセンターの「八重洲本大賞」を受賞した「銀河の片隅で科学夜話」は、高知工科大学の全卓樹先生が書いてますし、高知の大学には、なかなかの書き手がいらっしゃいます。ちょっと、嬉しい。
「シュメル」は、人類最古の文明、人類最古の都市を築いたシュメルについて書かれた本。その文字の成立や周囲の民との戦争、繁栄、そして衰退までを丁寧に書いてくれてます。地球上に、他に高度な文明が存在してなかった時代の、唯一無二の社会って、なんか、すごい。
僕らが「シュメール」と習ったのは、戦時中、「高天原はバビロニアにあった」とか「すめらみことは、シュメルのみことのことである」などといったトンデモ説が横行したので、シュメル学の権威であった京大の中原先生が、混同されないように「シュメール」と表記するようになった、とのこと。いつの世にも、おりますね、そんなトンデモ説をまことしやかに繰り広げる輩。
「帝国軍人」は、戦時中に将校だった人物たちから直接聞き取り調査をした、戸高一成さんと大木毅さんが、オーラルヒストリーと文書の問題を語り尽くしてます。歴史って、いろんな角度から見て見ないと、ホントのことはわからない、ということがよくわかる。
中段。右端。「日本蒙昧前史」は、芥川賞作家の磯崎憲一郎が、僕が子供だった頃の日本の姿を、小説仕立てで浮かび上がらせる。この題名が、僕のツボ。あの頃の真実。今につながる日本人の姿。ああ。
「フィリピンパブ嬢の社会学」は、大学院で日本へ出稼ぎにきているフィリピン人などの研究をするうち、フィリピン人のパブ嬢のヒモ生活を送るようになり、ヤクザとも対峙しながら遂に結婚した青年の、渾身のルポ。Jr.2号が、僕の誕生日に送ってくれた本。著者の実体験なので、なかなかの臨場感と説得力。面白かった。
こっからは東京の古い話がつづきます。
「吉原の面影」は、明治期の吉原を描いた小説を集めたもの。永井荷風、樋口一葉、広津柳浪、泉鏡花。それぞれの、その美しい文章が、当時の吉原の風景を浮かび上がらせています。ほんの100年前の、東京、吉原。今からは想像もできない風景。
「東京レトロ写真帖」は、浅草橋で洋食屋を営む写真家、秋山武雄さんが、1950年代から撮りためた東京の風景写真の写真集。なんでもないような風景がとても素晴らしい。なんでもない風景を撮っておくことって、素晴らしいです。
「江戸・東京水道史」は、江戸時代初期の神田上水から戦後の水道インフラまでを、昭和の時代に東京都の水道局で働いた堀越正雄さんが解説してます。急激に巨大化する大都市の水問題と立ち向かった人々の、物語。面白いっすね、こういうノンフィクションは。勉強になりました。
こんな感じで始まった11月。
今月のイチオシは、意外かも知れませんが「シュメル」。天アンカットの中公新書。個人的には「日本蒙昧前史」も好きやけど、おすすめとなるとね。違いますね。
長くなりました。さあ、月曜日。仕事をはじめましょう!