ベージュの折り畳み号で新改駅〔6346〕2020/08/30
2020年8月30日(日)晴れ
聞こえてくるのはツクツクボウシの声ばかり。
山の中の駅、JR新改駅に来てます。朝、ベージュの折り畳み号で出発してあんなとこ寄ったりこんなとこ見たりしながら、最後の急坂を喘ぎ喘ぎペダル漕いでたどり着いた、新改駅。自転車で来たの、初めて。
そもそものJR新改駅へ来たのが7年振り。この「線路はつづくよ、そこまでは」を書いた時以来の新改駅。駅の風情はそのまんまで、あのときと同じようにツクツクボウシの声に囲まれてます。
以前にも書いたように、スイッチバックの駅として全国的に有名な新改駅ですが、今朝もここから乗るのは僕だけ。平山の集落から1.3km。徒歩20分やけど、みんな、車で街まで行きますもんね。
昭和10年、土讃線が開通したときに、新改信号場としてできました。土佐山田駅の標高が43.2m、繁藤駅の標高が342.3mで、標高差約300m。その間に信号場がないと、すれ違いもできんし、なにかと大変というので作られた信号場。周辺に集落はないので、信号場。
ご承知の通り、スイッチバックにしたのは、急勾配のまんま駅を作ると、登りながら一旦止まった汽車が、二度と発車できなくなってしまうから。蒸気機関車が急勾配を登ってた頃は、切実な問題でありました。そして昭和22年、信号場から駅に。
土讃線では、この新改駅と、徳島県の坪尻駅がスイッチバック駅として、有名。
ウィキによると、この形式(通過可能形というらしい)のスイッチバック駅は、日本には9つあります。でも、そのうち3つは信号場。あと貨物列車用がひとつ、編成長大化によるものひとつ、なので、純粋旅客用スイッチバックは4つということになり、そのうち2つが土讃線なのである。えっへん。
しかも。残りの、篠ノ井線の姨捨駅と新潟県の鐘釣駅は、なんか、秘境でもなんでもない。
そんな意味で、新改駅と坪尻駅は、貴重やと思います。
でもこの新改駅は、車で来れます。確かに周辺に集落はなくて、平山から1.3kmやけど、車で来れます。そんな意味で、山道を歩いていくしかない坪尻駅は、すごい。あの駅は、くねくね曲がった谷を堰き止め、トンネルを抜いて、駅をつくるスペースを確保したもので、以前、探検してレポートしてますが、JRの駅の中では群を抜いた秘境駅と言えるでしょう。
この新改駅は、そこまでではないけど、昭和のはじめにこの山に鉄道を通すため、先人がどれだけ苦労したのかに想いを馳せるには、十分な駅であります。
ここに駅があることにまったく気付かないように、最新型、2700系の特急南風が通過してゆきます。先人の努力と新しい技術。
誰も気付かないような、なんでもないところに、先人の努力や苦労がつまっている。それを実感させてくれる、ツクツクボウシの声に囲まれたJR新改駅。