霧は「立つ」〔8096〕2025/06/15

2025年6月15日(日)薄曇り
今朝、会社へ行こうと家を出たら、驚きました。真っ白。街全体を濃い霧が覆っていて、まさに「濃霧」。堀川もこんな感じなので船舶の航行にも支障が出るくらいの、濃霧。のうむ。濃い霧。
そこで、我らが「大言海」で、霧を調べてみました。
きり(名)霧【霧るノ名詞形】
(一)空気中ノ水蒸気ノ、密ニヨリテ、水陸ノ面ニ近ク漂フモノ。モヤ。霧ノ起るヲ、立つト云ヒ、和歌ニハ多ク、秋ニ詠ム。
(ニ)人ノ息吹。人ノ、嘆キテ吐キ出ス、強キ気息ノ、霧トナリテ立チワタルトシテ云フ語。
これだけの説明に、知らんかったことがどっさり。人が嘆いて吐き出す息のこと、霧と言うたんですな。知ってました?
そして注目は「霧るノ名詞系」だ。「霧」は「霧る」という動詞の名詞形である、と、大言海の大槻文彦先生は言うておられます。そこで早速「霧る」を、大言海で見てみよう。
き・る(自動)霧【かをる、(靄)こる、きるト転ジタル語ナルベシ。かをり、(薫)こり、(香)こる、きる、(伐)名詞形ニテ、霧トナル】
(一)霧立チナビク、キラフ。
(ニ)霞ム。曇ル。クラガル。
(三)目、カスム。
さてさて。どうなんだろう。現代ではなかなか理解しにくい言葉、説明ではあるけど、「霧」は「霧る」の名詞形だと大槻先生がおっしゃってるので、そういうことなんだろうと思います。
ちなみに、大言海には7種類の「霧」が紹介されておるようです。
水霧、翠霧、迷霧、濃霧、蒙霧、雲霧、煙霧
この中でよく使うのは「濃霧」だけでしょうか。
のうむ(名)濃霧
コマヤカニ、トヂコメタルキリ。フカク立ツ霧。コキキリ。
どの霧が一番濃そうでしょうかね。迷霧とか蒙霧とか、すごそう。
めいむ(名)迷霧
(一)方角も分ラザル程ノ深キキリ。
(ニ)心ノマヨヒヲキリニ譬ヘテ云フ語。
もうむ(名)蒙霧 朦霧
(一)又、もうぶ。モウモウト立チコムル霧。
(ニ)胸中ノ晴レザルコト。気ノフサグコト。
日本語って奥が深いねー。自然現象に心の「ありよう」を重ねた言葉、多くありました。日本人の心は、大自然とともに、あります。
今朝の勉強で、ひとつ、覚えておきたいのは、霧は「立つ」のだ、ということ。そう。今朝は、街全体を濃霧が覆っていたのではなくて、街全体に「迷霧が立ち籠めて」いました。