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浜口雄幸の矜持〔4397〕2015/04/30

浜口雄幸の矜持

2015年4月30日(木)晴れ

宝永町の、歩道橋のある交差点の一つ西の信号。そこを南へ下ると、小さなお堂が立っちょります。昼間は、家々に挟まれて目立たない堂宇ですが、夜になると、オレンジ色の裸電球に照らされ、くらい道路にぽっかりと浮かび上がります。日切地蔵尊。
元々、日切地蔵尊は、期限を決めて願い事をすると、それが叶う、とされるお地蔵さん。この日切地蔵さんにも、たくさんの願掛けが行われてきました。

その中に、大正から昭和にかけて活躍した政治家、浜口雄幸さんの回復を祈ったものもありました。
浜口雄幸さん。五台山南の水口家から田野町の浜口家の養子となり、勉学に励んで高知中学、三高、東京帝大、大蔵省と進んだ俊才。で、若槻礼次郎らに認められて政界入りし、その頭脳、思想、謹厳実直な性格で首相に推されて第27代内閣総理大臣になったのはご承知の通り。
「男子の本懐」で有名なライオン宰相。

で、首相在任中の昭和5年11月14日、東京駅で右翼の凶弾に倒れ、重傷。
その際、この日切地蔵さんに、地元の人々が快癒を願って願をかけた訳です。その願いが叶い、昭和6年1月21日には退院、無理を押して3月には議会に顔を見せ、議場に登壇。野党政友会からの執拗な登壇要求に応え続けるも、容体が悪化して4月に再入院、総理を辞任して8月に逝去。

この日切地蔵さんには、一旦回復した際に喜んだ地元の人々によって「解願碑」が建てられました。その碑が、2001年に、地元有志によって再建されました。写真は今朝、4時過ぎの日切地蔵尊。小生の前に写っちゅう「尽くす」と刻まれた碑が、その解願碑。

こないだ、土佐史談会総会がありましたが、記念講演会は、高知出身で名古屋大学名誉教授の川田稔先生でした。演題は「浜口雄幸と昭和陸軍」。近現代史では、第一人者の川田先生。色んな著作がありますが、小生、「浜口雄幸と永田鉄山」と「満州事変と政党政治」という本を持っちょります。
そんな川田先生。実際に講義を聴いてみますと、実にわかりやすい。昭和初期、という時代の背景と、浜口、永田の思想。何故、時代は、ああいう流れになってしまったのか。実に客観的に、論理的に解き明かしてくれました。

浜口の功績は、議院内閣制に立脚した政党政治の確立。そして、第一次世界大戦後の、国際連盟体制下での、平和主義。軍隊が機械化され、これからの戦争は「総動員態勢」にならざるを得ない。経済力や資源、工業力など、総合力がないと戦争にならないし、一旦戦争になれば、世界を滅ぼすようなダメージを各国に与える、それがこれからの戦争である、という認識。
これは、浜口も永田鉄山も同じ認識でありました。

そこから、日本がどうあるべきか、という考え方が全然違う方向へと進む。
永田鉄山は、昭和初期の陸軍をリードした中堅幕僚で、影響を与えた軍人は、東条や武藤章など数知れず。政治力も持った軍人。で、国家総動員体制を敷き、政党政治は止めにして、統制的に国力を高めるを第一義とする。今一度の世界大戦は不可避、と見ておる訳だ。
もちろん現況の国力では勝てないので、とにかく、近隣(中国、満州)の資源を無理にでも我がものとする必要がある、という思想。で、満州事変などの流れになっていく訳です。
しかし、さすがの永田も、アメリカと総動員体制で戦争しても勝てる訳はない、とは考えている。ので、対米戦を避けながらの、アジアの中での日本の力を強めていく、ということを説いて、陸軍を中心に、影響力を強めていったのでありますね。

浜口は、世界大戦は、これからの国際政治の中で避けられる、と考える。で、ロンドン軍縮条約などに積極的に参加し、国際協調を推進する必要性を説く。総力戦になったら、日本は勝てない、ということを知っているので、進む道はこれしかない、と。

結局、浜口は凶弾に倒れ、満州事変が起こされ、永田の思うような方向に日本は進む。
軍部の政治への関与について、永田は、「純正公明にして力を有する軍部が、適当なる方法により為政者を督励するは、現下不可欠の要事たるべし」との考えを持ちます。国家総動員体制ですきんね。

こっから、軍部も、自分たちが撒いた種とは言え、色んな流れのコントロールができなくなり、日中戦争は泥沼化し、世の中を流れる空気に流されざるを得なくなって理性的な判断が封印され、あのような戦争になていったのはご承知の通り。

その辺りの事情を、様々な研究成果を総合し、極めて理性的に客観的に事実を話される。これは、歴史に対する姿勢として、一つの理想でもあります。

歴史に対する姿勢として、一番やってはならんのが、自分が見たいと思う歴史や情報だけ、選択して見てしまうこと。知らないことより、偏った情報だけを身につけてしまう方が遥かに始末が悪い。近現代史は、特に、そんな恣意的情報、自分が見たいと思う部分的な情報が錯綜しているので、理性的、客観的な見方というものが重要極まりないのでありますね。
特にネット情報は、偏ったり間違っていたり恣意的であったりする場合が多いので要注意。そんな情報の中で自分の感情に合った情報のみを取捨選択し、これが正しい歴史だ、と本気で思い込むことの怖さ。

先生の講演では、広範な客観的理性的研究の蓄積が自信となり、揺ぎのない、歴史に対する姿勢が見られました。
改めて、浜口雄幸さんの矜持、志、熱意、といったものを確認できた、記念講演でした。


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